首相を「野田」と呼び捨て、経団連会長「タヌキみたいなおっさん」 石原慎太郎流「敬称作法」を分析

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   一国の総理や閣僚を呼び捨てし、経団連会長は「タヌキみたいなおっさん」。東京都の石原慎太郎知事による2012年10月25日の辞任会見は、石原節がいつも以上に満載の内容だった。

   冒頭部分を含め約50分間の会見の中で、石原氏が名前をあげた日本の政治家は故人を除いて計10人。「君」「さん」をつける人と呼び捨てた人を色分けすると、政治的な立場が異なる相手や、「格下」には厳しい石原氏の姿勢が明らかとなる。

亀井、安倍、橋下は「君」と「さん」

   「君」「さん」をつけた政治家は、亀井静香「君」=国民新党=、安倍晋三「君」=自民党=、平沼赳夫「君」=たちあがれ日本=、園田博之「君」=同=、橋下徹「さん」と「君」の両方=日本維新の会=、中曽根康弘「さん」の6人。

   一方、呼び捨てしたのは、野田佳彦首相を筆頭に、前原誠司国家戦略担当相、小沢一郎氏=国民の生活が第一=、河野洋平氏=自民党=の4人。

   野田首相に関しては、会見中、尖閣列島問題に絡んで「魚釣島の頂上に大きな灯台造ったら、みんなよく分かりますよ。(中略)外務省はそれすら反対して、野田…。せめて灯台だけは造りたいと言ったけど潰されたんだ」と言葉を強めた。石原氏は11年11月の会見などでも首相を「野田」と呼び捨てし、「ある意味無能ではないか」とこき下ろしていた。

   辞任会見では前原氏への口調はより厳しく、横田基地問題をめぐるやりとりを紹介する中で、

「京都から出てる前原? あれが外務大臣しているときにね」
「『お前、ばかか』と。(中略)『貴様いったいどこの大臣だ』と言ったら」

   など完全に格下扱いしていた。

   続いて「選挙制度は中間選挙に戻すべき」と持論を展開する中で小沢、河野の両氏に触れ、

「やっぱり小沢一郎と河野洋平が馬鹿だからね、こういう選挙制度(小選挙区)やったんだ」

   と切って捨てた。「(政党連携で)生理的に小沢一郎と組むことはないだろうね」とも言った。

   やんちゃとも無礼ともいえる石原氏の口ぶりは経済人にも及び、歴代の経団連会長を評するくだりで、現在の米倉弘昌会長についてこう言った。

「それから今のタヌキみたいなおっさん、あれにも言ったけどですね」

   この発言を知ってか知らずか、石原氏の都知事辞任と新党結成に関する記者からの質問に対し、米倉会長は日中関係に絡んで「具合が悪い」と述べたという。

「シナ」発言も4回

   日中対立が深刻の度を増す中でも、石原氏の「シナ」発言はこの日も4回飛び出した。 外務省がタブーとするものとして、「アメリカ様」に続いて「シナ様」を挙げ、続いて尖閣列島問題やレアアースなどに絡んで「シナ」という言葉を繰り返した。

   石原氏は12年9月下旬の知事会見で、「相手が嫌がる『シナ』という呼称を使うべきではないのでは」との質問に対し、「嫌がる理由はないじゃないか。孫文が作った言葉じゃないか。ナンセンスだね」と答えていた。

   ネットなどでは「石原氏が嫌いな人を呼び捨てするのはいつものこと」と批判の書き込みが急増することはなく、会見の場での「シナ」発言も大きな問題となってはいない。

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