新型の超大型旅客機「エアバスA380型機」が、主翼のフラップに問題を起こし、出発直後に成田空港に引き返していたことが明らかになった。
乗客が撮影していた動画によると、「ドシン!」という音とともに、かなり強い衝撃をともなって着陸。タイヤは空気が抜け、白煙があがるなか消防車もかけつけるなど、深夜の成田空港は緊迫した雰囲気になった。
「ドシン!」という音ともに着陸
トラブルが起こったのは、2012年10月21日22時頃、成田空港をドバイに向けて出発したエミレーツ航空のEK319便。使用されていたのは世界初の「総2階建て」機のA380型機で、エミレーツ航空は同型機の成田乗り入れを12年7月に始めたばかりだった。
この便の乗客が撮影したとみられ、ユーチューブに公開されている動画によると、出発直後に
「皆さまに機長よりご案内申し上げます。当機は技術的問題により、成田空港に向かうことになりました」
と客室乗務員がアナウンス。着陸を試みたが風向きの関係で一旦は断念し、再び上昇した。その後、機長から、
「違う方向から着陸を試みる」
というアナウンスが入り、2度目の着陸で、「ドシン!」という音とともに着陸に成功した。客室からは拍手も起きた。アナウンスによると、着陸したのが23時30分頃。通常であれば、成田空港の運用は23時で終了してしまうので、同機のために滑走路の運用時間を一時的に延長した形だ。
着陸後は、機体の下の部分から白煙があがり、タイヤの空気が抜けてへこんでいる様子も分かる。消防車も数台確認でき、緊迫感が伝わってくる。
燃料を積んだままで重かったので着陸の衝撃が強かった
国土交通省の航空局安全部運航安全課によると、同機は離陸直後に主翼のフラップに不具合が発生し、成田に引き返すことを決定。ドバイまで飛べるだけの燃料を積んだままだったため機体は重く、ブレーキを強くかける必要があったため、着陸時の衝撃が大きくなったとみている。国交省では、着陸と、その後のスポットまでの移動は正常に行われたとしており、タイヤの空気が抜けたのは「熱を帯びると破裂する可能性があるので、空気を抜く仕組みになっている」などと説明。パンクとは違う事象で、滑走路の閉鎖も行われていないという。今回の事態は「イレギュラー運航」で、直ちに運航の安全に影響を及ぼす「重大インシデント」とは異なるとしている。
エミレーツ航空「お客様と乗組員の安全を最優先し、一切妥協をいたしません」
エミレーツ航空では、
「10月21日成田発ドバイ行のEK319便は、成田空港を出発し約1時間後にテクニカルトラブルのため成田国際空港に引き返しました。365名のご搭乗のお客様には、エミレーツ便または他社便への振り替え予約をいたしました。怪我を負ったお客様はいません。機体はその後点検をうけ、運用の許可を受けて、すでに運航されています。ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。エミレーツではお客様と乗組員の安全を最優先し、一切妥協をいたしません」
とのコメントを発表している。