尖閣諸島をめぐって日中の外交関係の緊張状態が続くなか、沖縄県沖で火災を起こした中国の大型貨物船の乗組員を、日本の海上保安庁が救助した。だが、中国外務省は「中国の駐福岡総領事館が直ちに体制をとった」などと自画自賛。日本側への謝意はなかった。一方、中国のネット上では日本に対して好意的な反応もあるようで、「雪解け」の兆しを指摘する中国メディアもある。
中国外務省は「駐福岡総領事館がすぐに体制を整えた」と自画自賛
沖縄本島の南東約150キロを航行していた大型貨物船「ミンヤン」が2012年10月20日夜に火災を起こし、連絡を受けた海上保安庁が巡視船2隻を派遣。10月21日朝までに乗組員64人全員を救助した。3人が軽傷を負った。
だが、中国外務省の洪磊・副報道局長は、翌10月22日の定例会見で、
「外務省は事態を重視しており、中国の駐福岡総領事館がすぐに体制を整え、日本側と協調して船の火災を消火するための措置をとった」
などと「中国主導」を主張。日本側に謝意を表すかどうかについて問われても、
「駐福岡総領事館を通じて緊密に意思疎通している」
と、質問に正面から答えることはなかった。
一連の事実関係については、「官営メディア」として知られる人民日報や新華社通信が、論評抜きで淡々と伝えている。
あの「環球時報」がネット上の感謝の声を紹介
だが、普段は日本に対して非常に厳しい論調で知られる人民日報系の「環球時報」は、かなり違った伝え方をしている。同紙は東京発で、今回の救助劇を
「日中関係は『厳冬』だが、心温まるニュースが日本からやってきた」
と報じている。中国のネット上では、
「命の大切さは国境を越える」
「日本が中国の船員を助けたことに感謝する」
といった声があがっていると紹介した。
ただし、記事では、
「日中関係は緊迫した状況が続いており、両国で楽観的な意見が出てくるには至っていない」
と、日中の厳しい現状についても伝えている。
08年の四川大地震直後に日本が救援隊を派遣した際は、中国ではメディアも世論も日本への謝意を表したが、その時とは反応が異なっている。