ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」は2012年10月22日、ジャーナリスト上杉隆氏が執筆したコラム内の一覧リストをめぐり、「読売新聞の図表を盗用したのではないか」と指摘されたことから、結論が出るまでの間、問題となった記事などを掲載停止にしたことを明らかにした。
盗用疑惑が浮上したコラムは「今なお続く大手メディアの"不誠実"な報道に対する不信感」。2011年9月22日にダイヤモンド・オンラインに掲載されたほか、連載をまとめて同年12月に発行された上杉氏の著書「国家の恥 一億総洗脳化の真実」(ビジネス社)にも収められている。
「読売が報じた記事と同一」の指摘
上杉氏はこの記事の中で、同年3月発生の福島原発事故の直後、海外政府が日本国内の自国民に出した避難勧告などの対応について大手メディアは「ほとんど報じてこなかった」と指摘。その上で、自身のメールマガジンで同年3月23日に配信した各国政府の対応一覧リストを掲載し、
「当時の日本では、世界のこうした動きを報じるだけで『デマ扱い』され、非難の集中砲火を浴びたものだ」
と記していた。
ところが、記事掲載から1年以上が過ぎた今年10月上旬、「上杉氏の言動を検証している」というサイトが「読売新聞からの記事盗用疑惑」という記事を公表したことで事態が急変する。
その記事は、上杉氏が昨年9月にダイヤモンド・オンラインにアップし、著書にも掲載した各国政府の対応一覧の図表は、読売新聞が半年前の3月19日付朝刊に掲載した対応リストの内容と、「並び順から言葉遣いに至るまで同一であることがわかる」と指摘。その上で、上杉氏は大手メディアが原発報道を避けてきたという事実を指摘するために、「(大手メディアである)読売が報じた記事と同一のものを、自前情報として披露していた訳である」と皮肉った。
これを機にネット上の掲示板には上杉氏の「盗用疑惑」に関するスレッドが設けられたほか、経済評論家の池田信夫氏も自身のブログに「お笑いネタ」として「読売の記事を盗用した上杉隆氏」という記事を10月12日に掲載。「こういうのを『盗っ人』猛々しいという」などと揶揄した。
この池田氏の記事に対して上杉氏は「完全なる事実誤認」であり「名誉を著しく棄損するもの」として、削除と謝罪を求める声明を出すともに、10月18日のダイヤモンド・オンラインのコラムでは指摘に関する釈明に加え、池田氏のブログにも言及。「悪意と作為に満ちた劣悪な記事」「池田信夫氏の言論を多様性を根拠に放置することは、百害あって一利なし」と批判した。
上杉氏、法的解決の道を検討
池田氏は翌10月19日、この問題に関するダイヤモンド・オンライン副編集長との一問一答を自らのブログに掲載。議論を終えた後の感想として
「ほとんど押し問答だったが、彼(副編集長)は『上杉氏の話を信用している』の一点張り。これだけ嘘をまき散らしている彼を信用するとはなかなかいい度胸だが、編集者にも(疑惑を打ち消す)証拠が提示されていないことがわかった」
と記した。
ダイヤモンド・オンライン編集長名の「当サイト記事に対する『図表流用』という指摘についての見解」が、サイト上にアップされたのはそれから3日後の22日のこと。その内容を抜粋して紹介すると、
「2011年9月22日に掲載した上杉隆氏のコラムの中で、『3月23日現在、原発事故への各国政府の対応』の表が、他メディアからの流用ではないかとの指摘がなされています。当編集部の確認に対し、筆者である上杉氏からは法的な解決の道を検討しているので、全面的な資料提供はできないとの判断が示されました。これを受けて、当編集部は、結論が出るまでの間、本記事と関連記事の掲載を停止いたします」
文面からは、上杉氏が盗用疑惑を否定する証拠提示を拒んだため、編集部として当該記事の掲載停止という判断に至ったとみられる。上杉氏の過去のコラムで、この問題に関連しない記事の掲載は続いている。コラムの今後については言及されていない。
上杉隆事務所はダイヤモンドによる掲載停止の判断前の21日、「多くの激励や応援をお寄せいただきありがとうございます。すでにお応えしているものも含め事務所として再度お応えして参りたいと思います。回答まで少しお時間を頂きますが何卒ご了承ください」とツイートしているが、上杉氏や事務所側は23日夕方までにこの問題に直接関連した新たなツイートを公開していない。
池田氏は10月23日未明、ブログを更新し、「ダイヤモンド社が真相を解決して謝罪するまで問題は収まらない」と述べている。