フィットネスクラブなどで見かけるバランスボール。もともとリハビリ用に開発され、最近はエクササイズプログラムにも使われている塩化ビニール製の風船のようなものだ。これを京都市の化粧品会社が、オフィスや応接室の全ての椅子と交換し、社員全員がバランスボールに座って仕事をしているとして話題になっている。
ネットでは、バランスボールは名前の通り座ると不安定な状態になるため、転倒する社員や来客がいるのではないか、などと心配の声が挙がっている。
社長の腰痛が緩和され「応接室」「工場」にも用意した
読売新聞の2012年10月22日付の電子版によれば、椅子を全てバランスボールにしたのは、ある美容室向け頭髪化粧品メーカーで、腰痛に悩んでいたこの会社の社長がフィットネスクラブで薦められ調子が良くなったことで12年4月から本社や支店、工場に計400個を購入し導入した。ボールの直径75センチ値段は1個2000円弱だったという。
この記事にネットでは、バランスボールは慣れれば椅子の代わりになるのは間違いないし、健康にもよさそうだ、という意見もあるが
「ひっくり返る奴が多発だな。大丈夫か? 」
「背もたれがないのは結構辛い。居眠りはできないぞ」
などといった心配が多数を占めている。
バランスボールは椅子の代わりになるのか、東京新宿にあるフィットネスクラブに行ってインストラクターに話を聞いてみた。
まず、バランスボールに座ってみたが、体が揺れてしまい、転倒するのではないかと不安な気持ちになった。
バランスボールはトレーニングに役立てるもの
指導に従って腹筋に力を入れ、両足でボールを抱えるとグラつきは安定し、背筋がピンと伸び心地よい状態になった。グラついてしまうのは姿勢が悪いことや、背筋に比べ腹筋が弱いなど「筋肉のバランスが悪い」ことなどが原因だという。
このボールに座る訓練を続ければ、「体幹」と呼ばれる腹直筋、大胸筋、後背筋などが鍛えられバランスが良くなるため、結果的に腰痛や肩こりが緩和されたりするという。エクササイズではこの「体幹」を鍛えれば、トレーニング効果が上がり、パフォーマンスが向上するのだという。
ただし、バランスボールを椅子の代わりに日常で使うことに関し、インストラクターは首を捻った。バランスボールの使い方としては、安定して座るのは初歩の初歩で、次は片足そして両足を地面から離して座れるようになる。そして、ボールを使ってストレッチをしたり、腹筋を鍛えるといったトレーニングに役立てるもの、という。また、
「いくら姿勢が良くなるとはいえ、仕事などで長時間にわたり同じ姿勢だとすれば、筋肉に負荷がかかり、痛みが出る原因になってしまいます」
バランスボールを座るためだけに使うとすれば、それは座った状態の体幹は鍛えられるものの、立った状態での体幹には及ばない。立った状態の体幹を鍛える別メニューが必要になるという。
ちなみに先の読売新聞の記事によると、実際に座った社員からは、姿勢がよくなった、アイデアが浮かびやすい、などと好評で、応接室に通される来客は初めは驚くものの、「商談は和やかに進む」などの声が紹介されている。