少ない資金で不動産に投資し、株式のように取引できる不動産投資信託(REIT)が復調している。東京証券取引所に上場するJ‐REITは35銘柄。東証リート指数は2012年10月22日現在、1000ポイントの大台をキープしている。
分配金(配当)利回りは市場平均で5%台と国債や株式の平均配当利回りに比べて相対的に高く、個人投資家などの関心が急速に高まっている。
海外投資家や国内地銀が買っている
東証リート指数は、米サブプライム問題発覚後の2007年12月に2000ポイントから急落。さらにリーマン・ショック後の08年10月には704.46ポイントまで下がった。その後、なかなか1000ポイントに届かなかったが12年6月にようやく乗せ、10月22日の終値は前週末に比べて6.22ポイント高い1038.16ポイントと、大台をキープしている。
個人投資家らに、リートの人気が上昇している背景には配当利回りのよさがある。みずほ投信投資顧問の10月のマーケット・ウォッチによると、リートの配当利回りと10年国債の利回りとの差は過去平均(3.55%)を上回る、4.56ポイントもの大差がある。株式(東証1部)の平均配当も2.5%と、2倍違う。
現物不動産市場に底入れの兆しが見えつつあることもある。みずほのマーケット・ウォッチは、都心5区のオフィスビルの9月の空室率が6月をピークに3か月連続で低下して、8%台の水準まで改善。また、賃料にも下げ止まりの気配が出ているとしている。
オフィスの平均空室率の改善や地価の上昇が進めば、平均賃料の増加も期待でき、リートの配当利回りの上昇も期待できるわけだ。
世界経済の先行きが不透明で企業の海外収益の減少が懸念されるなか、「リートは内需株なので、収益の安定性が評価されています」と、リートに詳しいアイビー総研の関大介代表はいう。
関氏は、「金融緩和によって資金を潤沢にもっている米国の投資家が(欧州の債務危機の落ち着きで)リスクをとれるようになったことで、日本のリートを買うようになってきました。国内でも、国債保有に慎重になりはじめた地銀などの投資家が買うようになり、資金の安定した振り向け先として、リートは内外から注目されています」と話す。
注目されるイオンのリート参入
さらに、政府がリート投資を後押ししていることも好調の要因。2012年7月末に閣議決定された「日本再生計画」では、20年までにJ-REIT市場の資産規模を11年対比で倍増する目標が掲げられている。
日本銀行の資産買い取りも、リート資産については10年10月に500億円だったものを段階的に引き上げ、12年4月には1200億円にまで上げた。日銀はこれまで、917億円のリート資産を買い入れている。
2013年に予定されている投資信託法の改正では、自己投資口の取得(過去に発行した自身の投資口の買い戻し=株式会社の自社株買いにあたる)や、株式の取得割合制限の撤廃(投資先企業の株式の過半数保有や海外不動産取得の実質解禁)などがあがっており、こうした制度改正が「材料視」されているようだ。
新規参入も活発になりつつある。なかでも運用会社を設立し、運用から物件管理までのすべてを「自前」で行う、小売業のイオンの参入は注目されていて、「イオンの上場がうまく行けば、リート市場に参入する企業が大きく広がる可能性があります」と、前出の関氏は指摘する。