日本企業がミャンマー進出に前のめりになっている。2012年10月11日に開かれたミャンマーを支援する関係国会合で、日本政府は同国への円借款を13年に再開することを表明した。
10月15日には全日本空輸(ANA)が12年ぶりに成田‐ヤンゴン線を就航。国内企業の現地進出を後押しし、また将来の観光需要に向けて「先手」を打った。ミャンマーは社会インフラの整備が遅れているため、その支援にも日本のさまざまな企業が相次いで乗り出している。
タイや中国と比べると、「ほとんどないといってもいい」
生産拠点、また消費市場として潜在性が高いとされるミャンマーが、いま注目されるのは、軍政が解かれ、テイン・セイン大統領による民主化改革が軌道に乗ってきたためだ。
日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所は、「これまでは米国やEUの経済制裁もあって、日本企業は身動きがとれませんでしたが、民主化から1年半が経ち、ようやく本格的な支援がはじまることがあります」という。
社会インフラもまだ未整備で、「ODA(政府開発援助)がつき、ファイナンスもついてきますから、(日本企業の)プラント輸出などへの期待は大きいでしょう」とみている。
日本からミャンマーへの直接投資は2010年度までの20年間で約2億ドルと、国・地域別で12位。約100億ドルを投じているタイや中国と比べると、「ほとんどないといってもいい」状況にある。
JETROによると、日本からミャンマーへ進出している企業は現在、ヤンゴン日本人商工会議所のメンバー企業だけで約60社。三井物産や三菱商事など、すべての大手商社やゼネコン大手。大和総研は東京証券取引所グループとともに、ミャンマー中央銀行と現地の証券取引所の創設を支援する。メガバンクも駐在員事務所を設けている。
ホンダやスズキなどの自動車も進出を目指し、二輪車ではヤマハ発動機が販売会社を設立する。ローソンや伊藤園なども進出を検討していることが伝えられている。中小企業でも電気部品や縫製業、ITに運輸、日本食レストランと、業種は幅広い。
そんななか、ANAがミャンマー線(成田‐ヤンゴン)の定期運航を再開。週3往復、利用者には多くのビジネスマンを想定し、当面は全38席がビジネスクラスの小型機ボーイング737型を飛ばす。バンコクやシンガポールでの乗り継ぎがなくなり、移動時間が短縮される。
10月15日午前、成田空港内での記念式典で、ミャンマーのキン・マウン・ティン駐日大使は「直行便の就航で日本からの渡航が活発になると信じている」と期待する。
もちろん、日本以外の企業でも米ペプシコなどの大手企業が進出に動くなど、ミャンマーは「投資ブーム」の兆しがある。
「勤勉で、なにより、とても親日的です」
一方、ミャンマーはこれまで外資系企業が少なかったため、有能なビジネスパーソンの確保が難しいとされる。
ただ、人材育成も日本が支援する。日本政府はミャンマーの商業省と商工会議所などと協力し、ミャンマー人のビジネスパーソンを育成する施設を13年春にヤンゴンに設立する。日本がビジネスの専門家を派遣し講義するほか、カリキュラムの作成などで協力。人材育成を通じて、日本企業の進出環境を整える狙いもある。
JETROアジア経済研究所は、「ミャンマー人は勤勉で、ワーカーレベルの士気は高いです。なにより、とても親日的です」という。
さらに軍政下においてミャンマーを支えていた中国との関係も、「中国にだけ頼っていても発展できないと距離を置きはじめていて、両国の関係は冷めてきています」と話している。