「前兆すべり」必ず発生するとは限らない
一方、地震予知の研究を続けていけば展望が開けると考える研究者も少なくない。東大地震研究所の吉村孝志教授は10月17日放送の「モーニングバード!」(テレビ朝日系)で、「今の段階では無理でも、近い将来には地震の前兆をとらえることができるかもしれません」と継続の重要性を強調した。
番組では、東海地震の予測のために実施されている観測の事例が紹介された。東海地震は、プレート同士の境界にずれが生じてゆっくり滑りだす「前兆すべり」が予測のうえでのカギとされている。そこで、前兆すべりを検知しようと静岡県や愛知県に「ひずみ計」という計器を27か所設置した。これで前兆すべりを探知し、それを十分検証できる時間的な猶予があれば予知できる可能性があるという。しかし、ひずみ計を設置した場所から遠く沖合で発生すれば観測できない恐れが生じる。そもそも、前兆すべりが必ず発生するという前提条件そのものが百パーセント正しいとは言い切れず、ゲラー教授も「根拠があいまいだ」と否定的だ。
文科省地震調査研究推進本部の2012年1月1日現在における全国の地震発生確率を見ると、30年以内に東海地震は88%、首都直下地震が70%と極めて高い。巨大地震への備えは「待ったなし」だ。「いつかは予知できるようになるかもしれない」という研究に多額の予算をかけるよりは、建物の免震や防災、減災の充実を図った方が現実的かもしれない。