日本新聞協会は2012年10月16日、青森市で開かれていた第65回新聞大会で「知識への課税強化は民主主義の発展を損なう」と、新聞への軽減税率導入を訴える決議を採択した。 だが、紙面では一貫して消費増税を推進し続けた一方で、自らには「お目こぼし」を求める新聞業界の姿勢をめぐりネット上の掲示板などには厳しい批判コメントがあふれている。
大会決議は今年3度目の軽減アクション
「知識課税の強化は活字文化の衰退を招く」。日本新聞協会会長の秋山耿太郎・朝日新聞社長は今大会の席上こうあいさつし、「経営を直撃する消費税の大波をどう乗り越えていくべきか。進むべき道を探り出していかねばならない」と述べたという。
採択された大会決議のうち、消費税増税に関する部分はこうなっている。
「今年8月、消費税を引き上げるための社会保障・税一体改革関連法が成立した。新聞を含む知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なうものであり、新聞には軽減税率を適用するよう強く求める。欧州諸国が新聞購読料に対しゼロ税率や軽減税率を採用していることに学ぶべきである」
軽減税率か給付つき税額控除か、消費税増税に伴う低所得者対策が決まっていないにもかかわらず、新聞協会内では既定の事実であるような内容だ。
振り返れば、軽減税率導入に向けた新聞協会のアクションはこれで今年3度目になる。まずは、消費増税関連法案が成立前の2012年3月。マスコミOBらの国会議員でつくる「活字文化議員連盟」(通称・活字議連 会長・山岡賢次氏)の総会に日本新聞協会長の秋山・朝日新聞社長と副会長の喜多恒雄・日本経済新聞社長らが出席し、衆参約20人の議員を前に新聞への軽減税率適用を訴えた。
続いて6月にも秋山会長らは活字議連総会にゲスト参加。「経済協力開発機構(OECD)加盟国の多くで知識への課税はゼロか最低率」とし、新聞を増税の対象外とするよう主張した。これを受けて活字議連は総会の場で、消費税を増税する際は特定品目の税率を低くする「軽減税率」を新聞・出版物に適用するよう求める声明を採択している。
しかし、新聞各社が消費増税導入を積極的に訴えてきたことは周知の事実。政府が2011年6月末に社会保障と税の一体改革の成案を決める以前から、読売や朝日、毎日新聞などは足並みそろえて消費税増税を紙面で推し進めてきた。野田内閣が増税関連法案を閣議決定した翌日の2012年3月31日付朝日新聞朝刊の社説の見出しは「消費増税はやはり必要だ」だったし、毎日新聞も「民・自合意に全力挙げよ」と前のめりの姿勢を示し続けた。
その挙句に出された新聞大会の決議に絡み、ネット上の意見はきわめて厳しい。
「増税をあれだけ煽っておいて、自分たちだけ特別扱いしろなんて」
「新聞はすでに贅沢商品。軽減税率をもとめること自体があつかましい」
といった声が大半を占めている。憤りにも似た意見も記されている。