2009年の衆院選で野党に転落するのを前に、大幅に国会議員の世襲を制限する方針を打ち出していた自民党が、その「骨抜き」を加速させている。県連で候補者を公募するという手続きを取ってはいるものの、引退を決めた現職の子どもを同じ選挙区から擁立するケースが続出しているのだ。自民党の中ですら、「(党の)外から見れば『なんでこんなに同じ名前が続くんだろう』というのは否めない」と、疑問の声を口にする非・世襲の議員もいる。
衆院選惨敗でマニフェスト形骸化
自民党は09年の衆院選マニフェストで、「『世襲候補』の制限等」という項目を盛り込み、3親等以内の親族を同一選挙で公認・推薦しないことを明記した。だが、総選挙で惨敗した直後の09年10月には、「都道府県連の公募や予備選で党員の支持が得られる」ことを条件に、世襲候補の公認も容認する方針に転じ、世襲制限は形骸化していた。
「年内解散」が取りざたされるなか、地盤を子どもに引き継ぐ動きが着々と進んでいる。例えば次期衆院選では、北海道12区の支部長は武部新(あらた)氏、香川3区の支部長は大野敬太郎氏が務めることが決まっている。2人とも公募で選ばれたという体裁だが、父親は、武部勤元幹事長と大野功統元防衛庁長官で、2人とも今期限りでの政界引退を表明している。
それ以外にも、引退を表明している福田康夫元首相、中川秀直元幹事長の地盤にあたる群馬4区と広島4区も公募実施中だ。だが、それぞれ長男の達夫氏と次男の俊直氏が立候補の方針で、世襲候補が「勝てる候補」として選考には有利だとみられている。