「失敗すればするほど幸運は来る。若い間に、いっぱい失敗して、挫折してください」――2012年のノーベル生理学・医学賞に決まった山中伸弥教授の発言が、ネットで物議を醸している。普通の人にとっては、日本は「1度失敗したらもうダメ」な社会なのに、安易に失敗を勧めて欲しくない、という反発が起こったのだ。
その一方で、「そう思い込んで諦めてるからだ」「どういう姿勢で臨んでいるかが重要だ」といった意見も出た。
「許容する空気があればな」「(失敗したら)派遣、ニートまっしぐら」
iPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞に決まった京都大学の山中伸弥教授(50)が、高校生らに「1回成功するために、9回ぐらい失敗しないと幸運は来ない。若い皆さんには、いっぱい失敗してほしい」「ジャンプしようと思ったら一度屈まないと跳べない。失敗を恐れず、思い切り屈んで」などと自身の経験を踏まえて語り、エールを送った。2012年10月12日、東京工業大学(東京・目黒区)で開かれたノーベル賞受賞者を囲むフォーラム「次世代へのメッセージ」に登壇した際のことだ。
次世代の挑戦を応援するための一般論と思われるのだが、この発言に一部のネットユーザーが難癖をつけた。失敗を繰り返して「幸運が来る」のは山中教授のように才能豊かな人だけで、普通の人にとっては、受験や就活で1度挫折したら這い上がるのは難しいのが日本の社会の現実なのだから、安易に失敗を勧めるな、というのが大方の言い分だ。
「それ(失敗)を許容する空気があればな」
「(失敗したら)派遣、ニートまっしぐら」
「日本は受験も就職も1回で合格しないとほぼ詰みの国だもんなw何でこうも失敗に厳しい国になっちゃったんだろ…」
といった感想が投稿され、「ノーベル賞取るほどの人材に言われても、世間の温度とだいぶ乖離してる」「研究者は甘っちょろくていい」などと非難する向きまで出た。
「何もしてないせいで失敗、挫折したなんて初めから論外」
ただ、山中教授については親から家業に向いてないといわれ、医学の道に進んだものの手術が下手過ぎて「じゃまなか」と呼ばれたなど、「落ちこぼれ」エピソードも広く知られる。別の場所では「失敗ばかりで泣きたくなるような20数年でした」とも話していた。それを踏まえて、「説得力ある」「この人のしてきた失敗や挫折を俺が経験したら間違いなく引きこもって鬱になる」とする投稿もあった。
さらに、「1度失敗したらもうダメ」を言い訳にして何もしないのを疑問視する声もあがった。
「自分がそう思って諦めてるからだろ。この話は試行錯誤した末での失敗なら次につながるってこと。何もしてないせいで失敗、挫折したなんて初めから論外」
実業家でグロービス経営大学院の学長を務める堀義人氏も13日、ツイッターにこう書いた。
「『日本は失敗を許さない』と言う人がいる。それは間違いだ。(中略)失敗・成功の尺度でなく、どういう姿勢で臨んでいるかの方が重要なのだ。周知を集め、誠実で勤勉に働いている人には、失敗しても必ず手が差し伸べられる」