尖閣諸島問題を発端に中国各地で起きた反日暴動をめぐり、トヨタが被害を受けた車に対して修理費用を負担する方針を明らかにした。暴動で新車販売が大幅に落ち込むなか、ブランドイメージや売り上げ回復につなげる狙いがあるとみられる。早くも、中国人の消費者からは「非常に感動した」などと日本企業を称賛する声も聞かれる。
章男社長「自分の体が痛めつけられているよう」
トヨタ車に対する暴動被害をめぐっては、豊田章男社長が2012年9月20日の会見で「自分の体が痛めつけられているよう」と嘆いた。これが影響しているのか、トヨタ系の販売店が、異例の取り組みに乗り出している。
自動車専門ニュースサイトの「盖世汽車網」によると、中国企業との合弁企業「一汽トヨタ」は、販売店に対して、
「これから10月31日にかけて、9月10日~30日に被害を受けた国産車については、顧客の修理負担をゼロにする。つまり、保険金が支払われない部分については一汽トヨタが負担する」
という内容の通知を出したという。また、修理ではなく買い換えを希望する際は、2万元(約25万円)を値引きする。同サイトによると、広東省に本拠地を置く広汽トヨタも同様の通知を販売店に出しているという。両社とも「補償」ではなく、顧客への「特別支援」だと位置づけているようだ。この「特別支援」を受けるたけには、警察や保険会社に被害を届け出たことを示す書類が必要だ。
日系車不振は合弁先中国企業にも影響する
9月15日までに1900台程度の日本車が暴動の被害を受けたと伝えられており、トヨタがこのような措置に踏みきった背景について、同サイトでは「ブランド力を回復させる狙いがある」と分析している。
この対応は、中国のネット利用者には、総じて好意的に受け止められているようで、「北京晩報」では、
「責任感があって、非常に感動した」
「最近、日本車の売り上げが激減しているが、トヨタは『消費者目線』だ。他の日系ブランドは、さらにだめになるだろう」
と、トヨタを評価する声を伝えている。
中国自動車工業協会が10月9日に発表した9月の新車販売台数は前年同月比1.8%減の161万7400万台だった。その主な原因が日系メーカーの落ち込みで、40.8%も減少していた。中国では、外国企業は中国企業との合弁でしか進出できない。そのため、日系メーカーといえども、生産の落ち込みは部品生産など周辺産業を巻き込む形で、地元の雇用にも影響しかねない。