ノーベル文学賞の有力候補と目されてきた小説家・翻訳家の村上春樹氏(63)が、今年の受賞を逃した。2012年10月11日(日本時間)、スウェーデンのノーベル財団が発表したところによると、今年のノーベル文学賞は莫言氏(57)に贈られる。
莫氏は1955年の生まれ。1976年に人民解放軍へ入隊後、文学を学び、1985年に『透明な赤蕪』で作家デビューした。代表作『赤い高粱』(岩波書店)は、張芸謀監督により映画化され、日本でも『紅いコーリャン』の題名で知られる。ガルシア=マルケスらから影響を受けたとされる「マジックリアリズム」で中国農村を描き出す作風で、中国文学から現代文学への橋渡しをしたとも言われる。
AFP通信が村上氏と並ぶ最有力候補と報じるなど注目が集まっていたが、「創作に専念したいため、控え目な対応を望む」とのコメントを出版社を通じ発表していた。
惜しくも落選したかたちの村上氏は、いま最も世界で注目される日本人作家として、ここのところノーベル文学賞の有力候補の「常連」となっていた。今年は特に前評判が高く、ノーベル文学賞受賞者を予想する英有力ブックメーカー「ラドブロークス」でも、2012年10月11日15時時点のオッズは村上氏が1.5倍とトップにつけていた。