「財源を増税に」「支出を復興以外に」という二重の失敗
さらに、これらを受けた7月29日の政府の「東日本大震災からの復興の基本方針」では、「被災地域の復興は、活力ある日本の再生の先導的役割を担うものであり、また、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はないとの認識を共有する」とされている。
いずれも、被災地の復興だけではなく、「日本経済の再生」というバラマキに都合のいい言葉が盛り込まれている。
おそらく各省庁の官僚からみれば、これまで何度も「日本経済の再生」が言われてきて、それに基づいて補正予算を作ったのに、なぜ今になって批判されるのかというところだろう。
しばしばマスコミでは、2011年度補正予算のときに「全国防災対策費」が入っているのはケシカランというが、それも「東日本大震災復興基本法」に基づくので、今さら批判されても困るという開き直りだ。
批判されるので、官僚からは今はあえて言い出さないだろうが、2011年度補正予算では、「その他の東日本大震災関係経費」があり、冒頭に紹介した国内立地推進事業の他の立地補助金(2050億円)、雇用対策(3780億円)、住宅関係(3112億円)などで総額2兆4631億円もある。ここは、被災地以外への復興予算の具体例を探すには格好の項目だ。ここを見れば、ツッコミどころ満載である。当分、週刊誌ネタには困らないだろう。
政府は、震災復興で財源を増税に求め、支出を復興以外に広げるという二重の失敗をした。そのしっぺ返しは大きいだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。