NECが募った1万人規模の希望退職について、しんぶん赤旗が面談の「一問一答」をリアルに紹介して反響を呼んでいる。これでは、面談する側もつらいのではないかというのだ。
「今の職場で今のまま業務を続けてもらうのは難しい」
「残って今の仕事を続けたい」
赤旗の2012年10月9日付記事では、100回ほども繰り返されたというこのやり取りなどが、禅問答のように続いていく。
計11回の面談で「辞めた方が得」などと迫る
面談は、NECが5月16日に希望退職募集を発表してから、携帯電話事業などの職場で行われた。対象は、勤続5年以上となる40歳以上の社員で、希望退職は「特別転進」の名で呼ばれていた。
その結果、8月28日に2393人が応募したことが発表された。海外や派遣などで8000人ほどが削減されることから、これで1万人のめどが立ったことになる。
とはいえ、その後、面談に事実上の退職強要があったのではないかと、国会や週刊誌で取り上げられた。赤旗の記事は、その様子を詳しく報じたものだ。
記事によると、40代の男性社員は、5月下旬から7月末にかけて計11回も、15~90分間の面談を受けた。男性がやる気をアピールしても、上司は「自己研さんの場ではない」「一般的にいうリストラだ」と強調した。苦痛なので面談を止めてと男性が訴えると、上司は業務拒否だと主張した。3回目の翌日に、男性は不安や不眠から心療内科にかかり、適応障害と診断されたという。
しかし、上司は、「法的に問題ない」として面談を続行した。指名解雇などになる可能性から辞めた方が得だとし、今のままでは会社や男性にとっても不幸だと指摘した。11回目になって上司の上役も面談に加わり、「残れないよ」と諭した。これに対し、男性が「もう自殺するしかないじゃないですか」と漏らすと、上役は、自殺は止めるようにと言って面談終了を告げた。男性は、現在も職場に残っているという。
男性のメモを元にしたという生々しい赤旗の記事だけに、ネット上では、大きな反響を呼んだ。
NEC広報「退職を強要したことはありません」
記事は2000件以上もツイートされており、「凄まじいな」「会社って、ここまでするのか…」と驚きの声が相次いでいる。一方で、「上司だって苦痛だろうこれ」といった指摘は多く、「無駄なことに日々労力使ってる」「自由に解雇出来るようにしないと」との意見も出ていた。
人事コンサルタントの城繁幸さんは、ツイッターで、「この会話の不毛っぷりが日本の停滞を象徴しているように見える」と嘆いた。そして、「『辞めろ』って言わずに追い込むのって、やる方も精神的に来るんだよね」として、リストラした大手企業で転職する人事担当者がかなりいると指摘した。「圧迫面接とかやってて終身雇用の現実が虚しくなるんだろう」と分析している。
男性が加入したという労組の電機・情報ユニオンでは、米田徳治執行委員長が、10回以上の面談も珍しくないと取材に答え、「制度上は退職支援になっていますが、実際は退職強要ですね」と会社側を批判した。会社側は「日航の判決を見ろ」と、機長らが敗訴したケースを挙げて脅しをかけているともした。ただ、人事担当者にも辞めた人がかなりいるとし、「上役からやるように言われ、『こんな会社でいいのか』とイヤになるのでしょう」としている。
NECの広報担当者は、取材に対し、男性が社員にいるかについて、「対象者は全員が面接を受けており、面接回数や年齢・性別、面談の様子など、この記事だけでは、登場している人物の特定、内容の確認はできません」と回答した。10回以上の面談もあるのかについては明言せず、「対象者1人1人の今後の役割や担当業務が変わって行く可能性があることを十分に理解いただき、本人の今後のキャリアの方向性を真剣に考えるよう気づきを与えることは、会社としての責任でもあり、面談で十分理解されていないと判断した場合は、面談が複数回になったケースがあります」とした。
ただし、退職強要があったことは明確に否定し、「個々人が自らの将来・キャリアの方向性を熟慮した結果として、本人の自由意志に基づき選択したものと認識しています」と言っている。面談した人事担当者が辞めているかについては、特に聞いていないという。