網膜の再生にも期待高まる
岡野教授の研究室のウェブサイトを見ると、動物実験で有効だった手法が人間にも当てはまるかは「慎重な検討を重ねる必要がある」となっていた。患者の立場とすれば、実用化は簡単でないと理解しつつ、「その日」が来るまでは手放しで喜べないようだ。脊髄損傷に限らず、iPS細胞を医療で活用するには倫理面での課題のクリアや法整備、費用面と、治療法の確立以外の面でも超えるべきハードルは少なくない。
それでも研究者たちの努力は実りつつある。脊髄損傷治療と並んで網膜の再生も、5~10年を目安に実現への期待が高まっている。山中教授はノーベル賞受賞決定後の10月9日、夫人とともに臨んだ会見で「途中で倒れたりしないように、マラソンより長い何十年という道のりを走っていきたい」と述べた。
仮に短期間では劇的な成果につながらなかったとしても諦めず、長期的なプランを携えて再生医療への道を切り開くという決意の表れだろう。