「5年くらいで実用化」目指す iPS細胞、脊髄損傷治療で研究進む

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「本当に元の体に戻るのだろうか」

   「夢の医療」が手の届くところに来ているように映るが、患者側はどうとらえているだろうか。全国脊髄損傷者連合会の理事長を務める妻屋明氏に取材すると、岡野教授の研究は知っているとしたうえで「急に次々と治るようになる、とは想像しにくい」と答えた。

   妻屋氏によると、脊髄損傷を患う人は全国でおよそ5万8000人。全般的に数は減少傾向だが、原因は交通事故と「高齢者の転倒」が顕著だという。自身も40年前に脊髄損傷を負った妻屋氏が「針のむしろにいるような激痛」と表現することから、そのつらさが想像できる。厳しいリハビリを乗り越えて社会復帰し、何年も生活を営んでいる側からすると、iPS細胞による治療法がまだ確立していない以上は「本当に元の体に戻るのだろうか。それよりも痛みを和らげる治療の開発が有益ではないか」と考えるのもやむを得ない。

   数年前に妻屋氏は、iPS細胞による脊髄損傷治療で「あと5年のうちに臨床試験」との話を耳にしたというが、今日になっても「5年」の壁はそのまま残っている。加えて安全面では、iPS細胞の「がん化」の危険性が完全に払しょくされたわけではない点が気になると話す。

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