「治る認知症」の代表である「特発性正常圧水頭症」は、介護現場では知られてきているものの、一般人である家族や、一般内科、精神科、救急の医師にはまだまだ知られていないことが、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の調査でわかった。同社が2012年9月25日に公表した。
日本に31万人の患者がいる
特発性正常圧水頭症は、歩行障害・認知症・尿失禁が重なる病気。歩行障害は小刻みな歩き、すり足で、転回時の転倒が目立つ。認知症はもの忘れ、意欲の喪失で、尿失禁が加わることが特徴だ。脳脊髄液の循環がうまくいかず、脳室にたまり、脳を圧迫するためと考えられている。脳脊髄液を腹腔や心臓などに流すシャント術で改善する。日本では31万人以上の患者がいると推定されている。
2012年5月、ケアマネジャー310人に特発性正常圧水頭症を知っているかと質問したところ、67%が「知っている」と答えた。内容では「認知症を引き起こす」(85%)、「歩行障害がある」(74%)、「治療で改善する」(69%)の順だった。「これらの症状のある人を専門医につなげるか」の問いには70%が「はい」と答えた。
一方、一般男女1000人で特発性正常圧水頭症を「知っている」と答えたのは12%弱で、女性16%、男性7%と、男女差が目立った。「家族が認知症になったらどうするか」との質問には「専門病院 (脳神経外科・神経内科) を受診」が53%で多かったが、「かかりつけ医」(22%)、「精神科」(9%)、「わからない」(14%)との答えもあった。
12年6月から8月には病院・診療所の各診療科医師を対象に、特発性正常圧水頭症を診療しているかどうかを質問した。やはり専門である脳神経外科(68%)、神経内科(54%)の診療率が際立って高く、リハビリテーション科(24%)が続いたが、一般内科、放射線科、精神科、救急科はいずれも6%台にとどまった。
調査は「ケアマネジャーの認識は高く、早期治療に結びつくが、一般市民の認識はまだまだ低く、専門以外の診療科で、治るはずの患者がかなり見逃されている可能性が高い」と結論づけている。
(医療ジャーナリスト・田辺功)