横浜市の公共事業用地の先行取得をしてきた市100%出資の外郭団体「市土地開発公社」が2013年度に廃止されることになった。地価の下落、市の財政難の下、公社方式での用地拡大の役割はほぼ終了したという判断だ。11年度末で負債総額は約1500億円に上り、全国の土地開発公社で最大だ。
市が公社の保有地を引き継ぐとともに、国の優遇措置を受けられる「第三セクター等改革推進債(三セク債)」を発行し、公社の負債を肩代わりする。発行規模は約1300億円に上る見込みで、これまで最高だった茨城県の381億円(2010年発行)を軽く上回る。
バブル崩壊にもかかわらず土地取得を膨らませる
同公社は飛鳥田一雄市長時代の1973年設立。公社なら、いちいち市議会の承認なしに機動的に先行取得でき、これを市が必要に応じて買い取って公共施設などを整備する方式だ。特に細郷道一市長時代の1983年に「みなとみらい(MM)21」事業がスタートし、高秀秀信市長在任中の1990年代前半、バブル崩壊にもかかわらず土地取得を膨らませた。MM21関係は区画整理前の1993~98年に取得、地区内の旧国鉄清算事業団の車両置き場跡地12.8ヘクタールを取得したのも1994年、すでに全国の自治体が土地取得から手を引き始めていた時期だ。
こうして、市財政局によると、公社の保有土地は、1989年度の簿価600億円の水準だったのが、1997年度には簿価3951億円とピークを付けた。さすがに、その後は新規取得を抑制する一方、市の買取りやMM21地区の公募売却などを進めてきたが、2013年度末で約34.4ヘクタール、簿価1635億円が売れ残り、塩漬けになっている。このうちMM21地区は10.6ヘクタールと広さで3分の1、簿価は1197億円と全体の7割以上を占める。
最大の課題は、一にも二にも塩漬けの土地の早急な処分
こうした「放漫経営」に、同市側は「虫食い開発を防ぐためだった」と釈明するが、「土地売却の計画が杜撰だった上に、相対的に国内では経済状況がよい首都圏というプレミアムと、横浜ブランドへの過信が加わり、傷口を広げた」(シンクタンク)といえそうだ。
今後の最大の課題は、一にも二にも、MM21地区の塩漬けの土地の早急な処分。しかし、セガサミーの大型娯楽施設の計画は中止され、劇団四季の暫定施設の劇場もこの11月で閉鎖になるなど、見通しは立っていない。逆に、近くの市港湾局が保有する10ヘクタールの土地も処分が進まず、埋め立て費用負担がのしかかる。
今回、三セク債が発行できる期限である2013年度に一括処理することにより、公社を存続させて市が長期間で公社保有土地を買取る場合の金利負担と比べ、190億~260億円の財政負担軽減効果が見込めるという。どうせ最終的に市が引き取らなければならないのだから、少しでも節約しようというわけだ。
「巨額の起債を消化できるかは未知数」
しかし、1300億円という数字は「けた外れに巨額」(市政関係者)。確かに市は財政健全化に取り組み、市債発行残高(減債基金積立金残高を差し引いた実質)は2008年度末の2兆3243億円から2012年度末には2兆2998億年に減り、実質公債費比率(収入に占める借金返済の負担割合)も2007年度の20%台から、2011年度は16.3%に改善している。それでも、2012年度の単年度の市債発行額は1327億円に上り、これに、ほぼ同額の三セク債が加わる衝撃は大きい。市債の格付け(スタンダード&プアーズ)はAA-(ダブル・エー・マイナス)を維持、直近9月発行の市債(ハマ債5、期間5年)の金利も0.28%だが、市場では「これだけの巨額の起債を消化できるかは未知数」(シンクタンク)との声も出始めた。