自分を見つめ直して「この先の人生をどう歩むか」整理する
金子さんの場合、余命を宣告されてから約2か月で葬儀や墓を手配したと伝えられている。自身の死と冷静に向き合って、「終活」を見事にこなした。一方で、普段の暮らしの中でよほどきっかけがなければ、自らの人生の「締めくくり」を考える時間はなかなか持たないだろう。自分の死に際して希望を伝えるための「エンディングノート」を残しておくにしても、「現実味」がないと墓や葬儀、財産処分をどうするか考えがまとまらず、書き方に悩むかもしれない。
武藤氏は、「過去を振り返り、家族や周りの人とのかかわりを考えながら自分の立ち位置を確認する『人生の棚卸し』から始めてはどうか」と提案する。例えばエンディングノートには、葬儀費用を預貯金で支払うか保険で賄うか、といった細かな項目まである。最初に自分を見つめ直して「この先の人生をどう歩み、未来に何を残すか」を整理してからでないと、いきなりこういった質問に明快な答えを出すのは難しい。
エンディングノートに着手したら、内容は毎年見直してほしいと武藤氏。1年過ぎれば生活環境や考え方は変わるもので、要望事項もそれに応じて変化する可能性があるためだ。
「死」とじかに向き合うのは本能的にいやだろう。武藤氏は、終活カウンセラー協会が主催する勉強会で、「墓碑にどんな文字を刻みたいか」「もしも余命が明日までだとしたら何をするか」といった質問を投げかけたり、「入棺体験」をしてもらったりと、体感的に「終活」の重要性の理解を進めていると説明する。最近は、20~80代と幅広い年齢層の人が参加している。