今年の新米は生育順調で豊作 原発事故後に上昇したコメ価格は下落か

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   農林水産省が2012年産米の作況指数(平年=100)を全国平均(9月15日現在)で「やや良」の102になったと発表した。「やや良」(102~105)となるのは、2008年の102以来、4年ぶりだ。

   6月に日照時間が不足した九州、四国、沖縄で100を下回る県もあるが、全国的には天候に恵まれ、水稲の生育は順調という。北海道が「良」の107となるなど、北海道、東北地方の豊作が目立った。

コメの量は年々減少し、直近は年間約800万トン

   東京電力の原発事故以降、コメは事故前に比べて1~2割ほど高値で推移しているが、新米(2012年産米)が豊作となることで、米価は下落するとみられている。

   農水省が作況指数とともに発表した統計資料からは、コメをめぐる様々な情報を読み取ることができる。日本が国内で主食用に消費するコメの量は年々減少し、直近は年間約800万トンだ。これに対して、今回の作況を基に農水省が予想する2012年産米の収穫量は820万トン。農水省のコメ政策は毎年6月末を起点に考えることになっており、農水省は2012年7月~13年6月のコメの需要見通しを798万トンと予想している。この予想は作況指数を平年並みの100を前提に計算しており、今年のように豊作となると収穫量が増加する。2012年産米は需要見通しを22万トン上回る計算になる。

大震災と原発事故でも、国内のコメが不足することはなかった

   主食用のコメは新米として収穫した秋以降、翌年夏まで1年間かけて消費するのが原則だが、実際には1年では消費しきれず、翌年に持ち越し、古米となる。これが民間在庫で、2012年6月末で182万トンある。この民間在庫に2012年産米の予想収穫量などを合わせると、年間供給量は1006万トンとなる。ここから需要見通しを引くと、来年6月末の在庫が計算でき、208万トンとなる。「民間在庫は200万トンを超えると過剰感が出る。ここ数年は180万トン前後が適正で、これを下回るとタイト感が出る」(市場関係者)という。

   現実に東日本大震災と原発事故で、国内のコメが不足することはなかった。それは2011年6月末の民間在庫が181万トンあり、翌2012年6月末は182万トンに増えていることからも証明される。それにもかかわらず、コメの価格が1~2割上昇しているのは、コメが足りなかったからではなく、「原発事故後、コメの価格が上がると見越した農家や取引業者が売り惜しみをしたから」(市場関係者)とされる。

首都圏でも消費者がコメを買い占め

   震災と原発事故後は、「コメが足りなくなるのではないか」という漠然とした不安から、首都圏でも消費者がコメを買い占めるなどした。しかし、2011年3月の津波の被害で倉庫から流失したコメは約2万トンにとどまり、その後のコメの検査で基準を超える放射性物質が検出され、流通できなくなったコメも約2万トン。つまり震災と原発事故で出荷できなかったコメは約4万トンにすぎなかった。

   今年の新米(2012年産米)が豊作で、年間需要見通しを上回る収穫が予想され、民間在庫も増える方向に働くことから、高止まりしていたコメの価格は今後、徐々に下落に向かうとみられている。これに対して農水省や農協が政府備蓄米の積み増しなど、価格安定に向けた新たな政策を打ち出すかどうか、関係者が注目している。

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