難しい課題は先送り
一方、最終報告では、消費者、生産者とも関心の高い加工食品の原産地表示の義務化は見送られるなど、課題も残った。
原産地表示は、現在はJAS法によって、4食品(ウナギのかば焼きなど)と22食品群(緑茶飲料など)で個別に義務化され、消費者団体などが長年、一律義務化を求めてきた。この点は検討会でも激論になったという。「なぜ国産だけで輸入品は適用外なのか」、「経済のグローバル化で原料の調達先は頻繁に変わるから、そのたびに容器包装の表示を変えることは不可能」など、議論の集約には程遠く、検討会とは別に引き続き議論することになった。
このほか、甘い菓子などに多く含まれるトランス脂肪酸は過剰摂取で心臓疾患のリスクを高める「メタボ成分」として、近年、関心が高まっているが、「日本人の平均摂取量は欧米諸国より少ないことなどから、活発な議論は行われなかった」(検討会関係者)。
遺伝子組み換え作物も、消費者の拒絶反応が強い一方、家畜のえさや食用油で大量に使われている現実もあり、「安全性の確保とは関係ない」との理由から議論されなかった。
こうした難しい課題の軒並み先送りで、「12回も検討会を重ねた割には、議論が深まらなかったテーマが多い」(食品安全に詳しいジャーナリスト)といった受け止めが多い。加えて、法律を監視・執行する体制についても、「現在の3法を所管する農水省、厚生労働省、消費者庁の縦割りは簡単にはなくならない」(食品関係のNPO関係者)とみられる。
それでも、「食品表示行政の半世紀の歴史の中で、表示項目の中で何が重要か話し合われたのは初めてではないか」(検討会関係者)という側面を評価する声もある。発足から丸3年を迎えた消費者庁の成果には違いない。省庁間の既得権維持の意識はなお高いが、垣根を越えた議論が曲がりなりにも始まった点で、検討会の意義は認められそうだ。