日銀の憂鬱な秋 強まる政界圧力に「打つ手」もなく…

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   日銀が2012年9月19日の金融政策決定会合で、国債などを買い入れる基金の規模を10兆円増額し80兆円とする追加の金融緩和策を全員一致で決めた。

   併せて買い入れ期限を2013年6月末から12月末に半年延長する。欧州債務危機の長期化に加え、中国などの新興国の経済減速から国内の生産や輸出の回復が想定以上に遅れていることを踏まえ、追加の金融緩和で景気を下支えする必要があると判断した。

追加緩和は「円高」への歯止め

   つい最近まで、日銀内では「海外経済の減速が内需にどこまで波及しているかを、日銀短観(10月上旬公表)で確認してから判断すればいい」との慎重論が根強く、市場でも「追加緩和のカードを切るのは10月」との見方が多かった。

   この流れを崩したのは海外経済の減速だ。欧州債務危機の影響は、ユーロ経済を引っ張ってきたドイツにも及び、向こう半年の景況感を示す指標が9月にマイナス18.2と低迷が鮮明になっていた。

   新興国でも、中国の1~8月の欧州連合(EU)向け輸出が前年比4.9%減るなど中国経済が減速、これに伴って日本の対中国輸出が減少。さらに中国の反日機運の高まりが加わり、日本製品の不買運動や訪日観光客減など、影響が深刻化する懸念が高まっている。

   最大のポイントになったのが米国の雇用統計(9月8日発表)で、非農業部門就業者数が前月比9万6000人増にとどまり、前月(14万1000人増)から回復ペースが大きく鈍化するなど、市場の予想を下回った。これを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月13日の公開市場委員会(FOMC)で大胆な追加金融緩和(量的緩和第3弾=QE3)に踏み切り、その前には欧州中央銀行(ECB)が南欧諸国の国債買い取り策を決定していて、日銀が追随しないと円高が加速するとの懸念が広がっていた。「外堀は埋まっていた」(政府筋)というわけだ。

   そうした中で実施した追加緩和に、9月19日の日経平均株価の終値は前日比108円高と約4か月半ぶりの高値水準を付け、東京外国為替市場の円相場も1ドル=79円台まで下落したように、金融市場では「サプライズ」(アナリスト)と受け止める向きが多かった。

   白川総裁が金融政策決定会合後の記者会見で、「(米欧に比べて)日銀の政策が大胆さに欠けるとは思えない」と胸を張ったのも、市場の反応に気を良くしたからだろう。

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