日中関係の悪化を招いた尖閣問題は、海外メディアも大きく報じた。反日デモで見られた中国人の暴力行為は批判するが、領有権については日本の立場に必ずしも同情的ではない。
むしろ「デモの原因をつくったのは日本」との指摘や、「尖閣は歴史的に見て中国領」と主張する米主要紙があるほどだ。
NYタイムズ「日清戦争の戦利品として奪い取った」
日本に対する海外メディアの反応が「予想以上に厳しい」と指摘したのは、作家の橘玲氏だ。2012年9月27日に自身の「公式サイト」で、9月半ばから26日まで香港やシンガポールなどに滞在し、現地の様子やメディアがどう報じたかをつづった。
香港の中立系の英字紙は、日系企業への暴力行為を非難する一方、デモそのものの責任は日本政府にあるとした。シンガポールのメディアの論調も日本に批判的で、「領土問題は原理的に解決不可能なのだから、問題化させないというのが国際社会の常識。それを日本が国有化によって踏みにじったために反日デモを引き起こした」とする。これは中国政府の主張とほぼ同じだと橘氏は見る。
欧米メディアは原則中立ながら、中国問題の専門家のコメントはやはり、「領土問題に火をつけた責任は日本」とするものが多いという。
米紙を読むと、「中国寄り」と思われる記事が見つかった。米ニューヨークタイムズ電子版で、ジャーナリストのニコラス・クリストフ氏が9月19日、台湾の大学教授による「尖閣は中国領」との主張を紹介している。
日本政府は、1885年以降に沖縄県を通じるなどして尖閣の現地調査を行い、無人島かつ当時の清朝の支配が及んでいないと確認したうえで、1895年に日本の領土に編入したと説明する。だがこの教授は明治時代の公文書を40本以上調べたうえで、当時の明治政府は尖閣が中国領だと認識していたとの見解を示した。
例えば1885年、最初の調査を受けて外務大臣が「中国の新聞が、台湾の隣にある中国領の島を我々(日本)が占領するたくらみをもっているとのうわさを流している」と書類に書いていたと指摘。また沖縄県知事も1885年11月、「この問題は中国と無関係ではないので、万一問題が生じたら私の責任において極めて重要な局面になるでしょう」とした。さらに清朝の記録にも、1885年以前に尖閣が中国に属していたとの記述が残っているという。
クリストフ氏はこれらの証拠物から、「日本が1895年、(日清戦争の)戦利品として尖閣を奪い取った」と見ている。