解散遠のけばしぼむ株式市場の期待
今や日本株は世界から出遅れて低迷している。前の安倍政権当時、日経平均の円表示の数字はニューヨークダウのドル表示の数字より高かった。ところが、リーマンショックで両方共に落ち込んでから、日経平均は低迷し、ニューヨークダウは回復した。その結果、今では、日経平均の円表示は9000、ニューヨークダウのドル表示は1万3000以上と、かつてと全く逆転している。
その理由はかつては円安、今は円高になったことでほとんど説明できる。本コラムで再三書いてきたが、為替は両国通貨の交換比率で相対的に多いほうが安くなる。いうなれば、為替はほとんど金融政策の差で決まるのだ。前の安倍政権の時には今と比較すればカネを刷ってそれで為替レートは120円くらいだった。それで輸出企業は潤い、株価も1万8000円以上だった。
こうしたことは株式関係者はよく知っているので、株式市場では安倍政権の誕生を期待する人は多い。ただし、それも総選挙をした後でないと、政策を実現できない。「近いうち解散」が遠のくと、株式市場の期待もしぼむだろう。そのうちに、古い自民党が復活しようものなら今の安倍自民党の人気も下がってしまう。
「近いうち解散」がすぐできれば、多少の自民党内のゴタゴタも隠されるだろうが、遠のくと、諸悪が噴出してくる可能性がある。
「近いうち解散」のポイントは党首間の信頼関係だけでは谷垣前自民党総裁の例をみても、うまくいかないだろう。特例公債法を使うことだ。財務省はつなぎ国債は違法であるといい、その旨の閣議決定をしている。ということは、特例公債法で、年度いっぱいの満額ではなく、一部の額だけで特例公債法を通し、残りは選挙後にやると約束するのだ。
こうでもしないと、野田首相は平気で嘘をつくのでまた騙されたということになるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。