新エネルギー戦略は矛盾だらけ 「建設中」は続行、「核燃料サイクル政策」当面維持

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   政府が2012年9月14日に決めた新たなエネルギー戦略は、2030年代に原発稼働をゼロとする目標を盛り込み、それを可能とする再生可能エネルギー拡大や節電の工程表を12年末までに策定することを決めた。

   しかし、この計画は衆院選をにらんだ「にわか普請」の性格が強く、多くの矛盾点をはらむ内容だ。

50年代半ばまで原発が動き続ける可能性

   大きな矛盾のひとつは、新戦略策定の翌日に早くも露呈した。枝野幸男経済産業相が9月15日、青森県の三村申吾知事との会談で「設置許可の出ている原発は変更しない」と述べ、現在建設中の原発については新増設と見なさず建設継続を認める考えを示したのだ。このうち東電の東通原発(青森県)については「賠償や事故対応の問題があり、建設を議論できる段階にない」と述べ、判断を先送りした。

   新戦略では、原発ゼロの目標達成に向けて①原発の40年運転制限を厳格に適用②原子力規制委員会の安全確認を得た原発のみ再稼働③原発の新設・増設は行わない――の3原則を確認。現在建設中の原発の扱いについてはあいまいだったが、枝野経産相が少なくても2基の建設を求めたことで、新戦略の骨格が早くも揺らいでいる。

   仮に2基が2010年代半ばに運転開始すれば、50年代半ばまで原発が動き続けることになるからだ。

青森県が放棄に強く反発

   この点について枝野氏は「(原発ゼロを)可能にできるよう最大限のことをやっていく。すべてはそこから先の話だ」と言うだけだ。仮に2基の稼働を2030年代に止めれば、事業者が投じる建設資金を回収できなくなり、損害賠償問題につながることも考える必要がある。

   原発ゼロを打ち出しながら、原発から出る使用済み核燃料を再処理し、原発の燃料として再利用する「核燃料サイクル政策」の「当面維持」を打ち出したことも、混乱の火種だ。核燃サイクルの中核である高速増殖炉開発は、原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の目的を放射性廃棄物の減量研究などに転じ、年限を区切って研究を終えるとし、将来的な廃止の可能性を示唆した。

   核燃サイクル政策自体の維持を打ち出したのは、これを前提に六ヶ所村の中間貯蔵施設で使用済み燃料を保管している青森県が放棄に強く反発していたため。しかし、今後段階的に原発の稼働を減らしていけば、使用済み燃料から抽出されるプルトニウムは使い切れずに余る可能性が高い。

「原発ゼロ」は核燃サイクルの放棄

   プルトニウムは核兵器の主原料。新戦略策定の直前になって米国が「重大な関心」を示してきたのは、「原発ゼロ」が詰まるところ核燃サイクルの放棄につながることを見抜いているからだ。プルトニウムが、使用目的があいまいなまま日本に「貯蔵」されれば、核拡散防止条約(NPT)体制が崩れ、米国の対イラン、北朝鮮政策にも重大な脅威となりかねない。

   この問題の解決はまだ先の話となるが、政府内では「新戦略を厳格に守るならば、使用済み核燃料は米国がニューメキシコ州に建設を進める最終処分場に引き取ってもらうしかない」(経産省関係者)というささやきが漏れている。

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