ギリシャ人が「怠け者」のように言われるのがつらい
ギリシャ滞在中、現地の人と何度か食事を共にして話を聞いた。年齢や立場が違う人たちだが、誰もが共通して抱えていたのが「事態が日々激しく変化していて、将来どうなるかが分からない」との不安だった。
同時に、「不安定な国情の原因は政府だ」と政治への不信感や怒りが高まっている。「政策がいきあたりばったり」「後先を考えず、無計画」と評価は手厳しい。2001年にユーロ加盟を果たし、アテネでは新空港の建設をはじめインフラ整備が進んだ。2004年にはアテネ五輪が開催され、ユーロ圏の一員としてギリシャの人々は明るい未来を描いていたはずだ。そこに水を差したのが、政府が隠し続けていた巨額の財政赤字。景気は一気に冷え込み、国際的な信用が損なわれ、負債のツケは国民に回された。政府にだまされた――。そんな思いを強める人は少なくない。
記者がギリシャで会った人々は、今も夫婦共稼ぎで生計を立てている。長年まじめに積み上げてきた自負があるだけに、「ギリシャ人が『怠け者』のように言われるのがつらい」と、ひとりの男性は打ち明けた。
仕事を持つ彼らでも、給与カットや高騰する税金に頭を悩ます。会社の合併にともなって同僚が解雇される姿を見た人もいる。自力で起業するビジネス文化も、それを支援する風土も育っておらず、失業者が自営業でやり直すのは困難だ。行動を起こそうにも打つ手がなく、それでも緊縮財政の余波は今後も容赦なく襲いかかってくる。
視界不良のなか、ギリシャは再建にこぎつけられるだろうか。