時間外手当を給与とほぼ同額受け取り、昨年度の年収が1500万円超に達する40代のさいたま市職員がいることが分かった。この職員を含めて、年間1000時間以上も残業した職員が80人ほどもいたというが、なぜそんなことが許されるのか。
高額な時間外手当支給が発覚したのは、2012年9月19日のさいたま市の定例市議会でのことだった。
年間1000時間を超える時間外勤務が79人
一般質問に立った冨田かおり議員(改革フォーラム)が時間外手当についてただしたのに対し、市の総務局長が答弁で明らかにした。
それによると、課長補佐級の40代男性職員は11年度の1年間で、1873時間の時間外勤務をし、783万円もの手当を支給されていた。この職員の年間給与は791万円のため、合計の年収はなんと1574万円に上ることになる。残業は、土日祝日も含めると、1日当たり平均5時間もしていた計算だ。
さらに、医療職を除く職員では、年間1000時間を超える時間外勤務をしたのが79人もいた。最も多く働いたのは1925時間だったが、給与水準も低い職員だったので、手当は700万円を超えていなかった。
この答弁内容が地元紙で報じられると、ネット上では、驚きの声が上がった。「ギリシャみたいだ」「一体どんな仕事の仕方してる訳?」「これじゃいくら税金あっても足りないわw」といった書き込みが相次いでいる。
さいたま市の職員課では、取材に対し、この職員が震災対応に追われ、土日祝日も働いていたことが大きいと説明した。ゴミ収集などの現業ではなく、一般事務をしていたというが、具体的な業務の内容などについては、個人情報保護のため答えられないという。
2000時間近い時間外勤務については、臨時公務に当たるため、労基法違反にはならないとした。それを市が認めたのは、震災という特殊な事情があったからで、臨時職員を雇う時間もなかったとしている。
前年度も、1500万円を超えた職員がいた!
1000時間を超える時間外勤務をした79人についても、震災対応をしていたケースが多かったという。さいたま市の職員課では、「職員は、所属長の確認を毎日受けていますので、きちんと業務をこなしていたと考えています」と話す。
ところが、震災前だった2010年度について職員課に確認すると、このときも年収1500万円を超えていた職員がいたことが発覚した。
同一職員ではないものの、同じ課長補佐級の男性で、1年間で1843時間の時間外勤務をし、747万円もの手当を支給されていた。この職員の年間給与は781万円のため、合計の年収は1528万円に上る。職員課では、生活保護を受け持っており、その業務量が多かったためだと説明している。
さらに、年間1000時間を超える時間外勤務をしたのが、11年度を上回る112人もいたことが分かった。こちらも、その3割が生活保護を受け持っていたという。つまり、震災時だけではなく、その前から高額な時間外手当を支給されていた職員が多数いたわけだ。
震災の被災地に聞くと、福島市の職員課では、「時間外手当が給与と同額なケースは、昨年度でもさすがにないですね」と驚いた様子で話した。11年度は、震災対応などで1000時間を超える時間外勤務をしたのが25人いたが、最も多い2100時間勤務の職員で、手当が500万円ぐらいだという。震災前の手当は、多くて200万円台ぐらいだとした。
さいたま市と同じ首都圏の千葉市では、国への派遣を除くと、11年度は、最も多い1256時間勤務の職員で、手当が350万円ぐらいだという。1000時間を超える時間外勤務をしたのは5人だけで、いずれも震災対応だった。市の給与課では、「うちでは、課長補佐級は管理職ですので、時間外手当はありません」としている。