デモの次は「経済制裁」に乗り出す
中央弁公庁では9月初めに人事異動があった。新たにトップに就いた人物が、次期指導者とみなされる習近平氏の側近だという。こうなると、習氏の意向を受けて中央弁公庁がさまざまな調整を図り、デモや漁船団の準備を進めたと解釈できる。「裏で陣頭指揮を執っていたのは習氏」と矢板氏は話す。推測の域は出ないが、ほかにも「習氏黒幕説」を唱える専門家はいる。
もともと習氏は対日強硬派とも言われる。米国のパネッタ国防長官との会談では、「日本の尖閣国有化は茶番だ」と厳しく批判し、尖閣問題では一歩も引かない構えを見せた。
デモは収まってきたが、一方で中国当局は別の方法で対日制裁を打ち出してきたようだ。中国の税関では日本からの輸入品に対して通関手続きを強化し、長引けば現地日系企業にとって部品などの調達に遅れが生じる恐れが出てきた。レアアース(希土類)の対日輸出を制限するのではないか、とのうわさも浮上している。日本を旅行する予定だった中国人観光客が続々とキャンセルしており、観光地では影響が懸念される。経済面で、さらなる締め付けをかけてくる可能性がある。