「生活費を差し引いたら、とても預金なんてできない」
長年順調だったレストラン業。かつては従業員を雇って6人態勢で営業していたが、今は店長とその妻の2人で店を切り盛りしなければならない。
伸び悩む売り上げをカバーするために経費削減に取り組むが、「料理の質は絶対に落とさない」とのこだわりから、以前と同じ良質の食材を使うと話す。だがここでも店長を苦しめるものがある。付加価値税(VAT)だ。これは日本の消費税にあたるもので、金融不安のなか2010年には23%にまで上昇した。食材を調達すれば高額の税金を支払わねばならない。しかし価格は、少しでも集客率を高めるために以前より下げざるを得なかった。今後、現政権が約束した緊縮財政が実行段階に入っていけば、消費者はますます財布のヒモを固くして、レストラン事業はさらに苦境に陥るかもしれない。
「収入は減ったのに、金銭面の負担が増える一方です。いったいどうすれば営業を続けていけるのでしょうか」
店長は悲鳴にも似た調子で、苦しい胸の内を明かした。
一般の家庭でも、収入が細る半面、毎年のように重くなる負担と同じ苦しみを味わっている。アテネ在住のあるギリシャ人夫婦に聞くと、夫は「先が見えない不安、怒り、さまざまな感情がわき出てきます」と吐露する。妻も「(2012年6月の)再選挙後、事態は悪くなっていると思う」と、苛立ちを隠せない様子だった。
別のギリシャ人女性は、こんな風に嘆いてみせた。
「せっかく仕事でお給料をもらっても、税金でゴッソリもっていかれちゃう。日々の生活費を差し引いたら、とても預金なんてできないわ」