「高台」や「強固な地盤」をもつ住宅地が人気だ。国土交通省が公表した2012年の基準地価(7月1日時点)によると、東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の住宅地は、下落幅が11年の1.9%から1%に縮まった。
東京都は23区内の住宅地の上昇地点はゼロだったが、これに対して丘陵地で比較的地盤がよいとされる多摩エリアでは日野市や昭島市などの8地点で上昇した。
丘陵地の多摩エリア、駅近でも地価は都心の3分の1
東日本大震災後、初めて公表された2011年の基準地価は、地震による液状化被害や土地取引の自粛で千葉県を含む東京湾岸エリアの地価が大きく下落するなど、地価動向に冷や水を浴びせた。
あれから1年。12年の基準地価をみて、不動産調査会社の東京カンテイ、井出武・主任研究員は「液状化が問題になった湾岸エリアも高層マンションの建設が進んでいて、地価も人気も戻ってきています。千葉県浦安市も一部を除けば、(震災の影響は)かなり薄れています」と話し、地価の底入れムードは広がっている。
とはいえ、人気は郊外の丘陵地。それが基準地価にも表れた。東京都の住宅地は前年比で「横ばい」が目立ったが、日野市4地点、昭島市2地点、稲城市2地点と多摩エリアに上昇地点がみられた。
上昇率のトップは日野市三沢の1.1%。京王線と多摩都市モノレールの高幡不動駅から徒歩で約10分。新宿まで通勤快速で50分前後で、周辺は市が02年度までに総額95億円をかけて区画整理した、低層住宅が並ぶ閑静な住宅地だ。
日野市の住宅地の平均価格は1平方メートルあたり17万9000円。都区部平均の48万4000円の約3分の1と安いことから若いファミリー層の需要が強い。
多摩エリアも、震災後は埼玉県入間郡から東京都青梅市や立川市、府中市を走る立川断層帯が心配されたが、「地価は極端に下がってはいません」(井出氏)という。
震災以降の、地盤の固さや防災機能が評価されて下落率が縮小する傾向が続いている。