ホテルは宿泊客を確保しようと割引を多発
記者がレストランで店員から耳にした話を、アテネ在住の女性が裏付けた。
アクロポリスに隣接するプラカ地区は、昔ながらのおしゃれなたたずまいの店が並ぶ観光客に人気のスポットだ。記者が歩いた日もある程度の人出があったが、その女性に言わせると「以前は観光シーズンともなれば、前に進めないほどビッシリと人であふれていました」というから驚く。
確かに表通りはにぎやかに見えるが、少し裏に入るとガランとしていて、ほとんど開店休業状態の店もあった。レストランは客引きに懸命で、ランチタイムでも空席の多い店がちらほら目に入った。土産物店の店員の決まり文句は「表示価格の半額で販売しますよ」。たたき売りしてでも何とかしたいようだ。地元民にすれば、ほんの数年前と比べると「隔世の感」があるかもしれない。
観光立国のギリシャでは夏のバカンスを過ごそうと、例年多くの人がやって来ていた。2011年には過去最高となる1650万人が訪れ、観光産業全体でGDPの15%超を占めるとも言われている。だが長引く金融危機から社会的に不安定な状態が続き、11年秋から大規模なゼネストや反政府デモが繰り返された。政府の緊縮財政に反発した若者を中心に、アテネ中心部で警官隊とたびたび衝突。一部が暴徒化して店舗を襲撃した。
記者が訪れた8月下旬のアテネは、混乱は全く見られず、デモの舞台にもなったシンタグマ広場は日常の姿を取り戻していた。だが、デモの映像が各国で繰り返し流されたこともあり、ギリシャに治安面での不安を感じて旅行先として敬遠した人は多いかもしれない。
地元の人に聞くと、ホテルは宿泊客を確保しようと割引を多発しているという。欧州向けの低価格パックツアーも増えているそうだ。思うように集客できないなか、それでも観光に頼るしかないギリシャの苦闘は続く。