中国で拡大が続く反日デモの影響が、スポーツにも波及しつつある。中国側からはバドミントンのチームの派遣が取りやめになる一方、卓球やトライアスロンでは日本側からの参加を見送るケースも出始めた。スケートについても、このままの状況では選手派遣が難しくなるとの声が出始めている。
仮に中国で行われる大会に出場できなかった場合、2014年のソチ五輪と同じ会場で行われる大会への出場も難しくなり、五輪の準備にも響きかねない状況に発展している。
中国杯不参加でソチのGP決勝進出が絶望的に
スポーツ各紙によると、日本オリンピック委員会(JOC)理事で、日本スケート連盟会長の橋本聖子参院議員は2012年9月18日に行われたJOC理事会の席で、反日デモに関する情報収集を強化するように訴えた。その上で、
「この状況だと選手は送り込めない」
と、選手の安全が確保されない限りは、選手の派遣は難しいとの見方を示した。橋本氏は、9月19日にも福岡市内で同様の発言をしている。
中国では、12年11月に上海でフィギュアスケートのグランプリシリーズ「中国杯」が行われるほか、12月には上海でショートトラックのワールドカップ、ハルビンでスピードスケートのワールドカップが予定されている。
これらの大会の中で、最も影響が大きそうなのが、フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ「中国杯」。中国杯には女子は浅田真央、安藤美姫の両選手や男子は高橋大輔選手らが出場を予定している。
GPシリーズは今回の上海の大会を含めて6大会行われ、通常、有力選手は2大会出場する。獲得したポイントの上位6選手が12年12月に行われるGP決勝に出場できる仕組みだ。GP決勝が行われるのはソチ五輪の会場で、選手にとっては重要な「前哨戦」としての意味も出てくる。だが、仮に中国杯に出場できなくなった場合は、五輪に向けた練習の機会が失われることになる。
出場の可否については、9月23日に行われるスケート連盟の理事会で判断したい考えだ。
卓球・石川選手も「安全を確保するのが困難な状況」で断念
中国と関わりが深い卓球にも影響が出た。中国の黄石で9月21日に開幕する女子ワールドカップ(W杯)にエントリーしていた石川佳純が出場を取りやめることになったのだ。日本卓球協会が9月19日に発表した。石川選手は中国合宿中で、反日デモ発生後も出場の意向を変えていなかった。だが、協会の発表によると、同日午前になって、中国卓球協会から、
「安全を確保するのが困難な状況にあるので、石川選手の出場について再考してほしい」
と連絡があり、日本側も大会参加断念を決めたという。