自民党の総裁選(2012年9月26日投開票)を前に、候補者4人が9月19日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。町村信孝元官房長官は検査入院のため出席しなかった。
「再稼働容認」「尖閣諸島の実効支配強化」という点では各候補が大筋で同じ主張を展開したものの、石破茂前政調会長が原発と日米同盟との関係を「忘れてはならない」と強調したほか、石原伸晃幹事長は尖閣諸島について「『領土問題は存在せず』というところから一歩踏み込んで」と、従来の政府見解を変更するように求めた。
「領土問題が存在するということを世界の国々が知るところになった」
尖閣諸島の問題をめぐっては、各候補から国内法の整備で実行支配を強化する一方、「経済的互恵関係」に基づいて、お互いの経済的利益を損なわないようにすることが重要だとの意見が相次いだ。中でも石原氏は、
「今回の事案の発生で、日本と中国の間に領土問題が存在するということを世界の国々が知るところになった。その意味では、中国はこの宣伝戦の緒戦を制した」
と述べ、現在の「そもそも、解決すべき領有権の争いが存在しない」との政府見解は現実に即していないとの見方を示した。さらに、
「歴史的事実をしっかりと世界に対して、『領土問題は存在せず』というところから一歩踏み込んで情報を提供し、理解を得ていくことが非常に重要ではないか」
と対外PRを強化すべきだと主張した。
また、4候補とも、尖閣諸島の国有化については「国有化の事実は変更できない」(石原氏)などとして撤回する考えがないことを明言した。なお、石原氏は、
「国有化で間違ったメッセージを送った。地方自治体の『民-民』の取引と、国が買うというのは違う」
と、国有化のプロセスについては批判的な立場だ。
石破氏「日米原子力協定から目をそらしていないか」
原子力については、「再稼働容認」で4候補とも一致した。政府が2030年代に「原発ゼロ」を目指すエネルギー・環境戦略を打ち出したことについては、批判の声が相次いだ。例えば安倍晋三元首相は、
「原発への依存を減らすのは国民のコンセンサス」
としながらも、
「ものづくりの経営者は拠点を日本に置くべきか判断を迫られている」
「民主党のようにに『ゼロ』と言った瞬間に、日本の技術者は流出してしまう」
と、製造業が受けるダメージについて指摘。石原氏も
「安定した、廉価な電気供給なくして、産業はその地域で成り立たない」
と同調した。林芳正政調会長代理は、新基準で安全確認を行うことの重要性を強調した。
異色だったのが石破氏。石破氏も、
「他の技術の開発は急ぐ。電気自動車普及も急ぐ。そういうものに全勢力を傾注するが、だからと行ってゼロということには相成らない」
と、電力の安定供給の面から原子力は当面は必要だとの立場だが、
「日米原子力協定から目をそらしていないか。このことを忘れてはならない。我が国が平和的に原子力を利用するということが、どういう意味なのか。日米同盟にとって、どういう意味を持つものなのかということをしっかり認識し、合衆国に説明することが必要であり、国民にも、それを説明しなければならない」
とも述べた。同協定は1955年に成立し、核物質の再処理と第三国への移転などについて定めている。具体的には、日本が米国から濃縮ウランを輸入することにも触れられている。石破氏は、「原発ゼロ」が安全保障に与える影響について言及した形だ。