ユニクロ、イオンなど株価下げる 中国の「暴走デモ」、日本の流通・小売大手に痛手

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   日本政府による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化に反発を強める中国では、満州事変の発端となった柳条湖事件から81年目を迎えた2012年9月18日も、北京市の日本大使館前をはじめ、上海市や瀋陽市など約50の都市で反日デモが繰り広げられた。

   一連の反日デモでは参加者の一部が暴徒化。日系の百貨店や総合スーパー、コンビニエンスストア、日本料理店などではショーウインドウが割られ、陳列棚が倒されて商品が踏みにじられたり、略奪されたりして休業に追い込まれた。日本製品のボイコットが激化しているほか、東京株式市場では流通・小売業などの株価が軒並み下落した。

中国消費者向けに販路拡大の矢先・・・

   日本国内での個人消費が低迷するなかで、中国は中間層の増加が著しく、市場が拡大している。なかでも日本の食文化やファッションは海外でも人気が高い。日本の流通・小売り大手は中国経済を取り込んでいくことを基本戦略と考え、多くが出店攻勢を仕掛けている。こうした「内需型産業」は中国に店舗を増やし、これから本格的に稼ごうとしているところだ。

   「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングはファッションで最も先行し、中国国内に145か店、香港に16か店を構える(2012年8月末現在)。生産工場については、最近はもっと人件費が安い中国以外に移転しており、さらに生産規模を拡大する傾向にある。15年8月期には中国を含めた海外売上高比率を5割に高める計画だ。

   その矢先に、尖閣問題が再燃。ユニクロも上海市などで店舗が破壊され、一部で休業を余儀なくされている。

   上海市の「ユニクロ」では、破壊行為を回避しようとしたのか、ショーウインドウに「支持釣魚島是中国固有領土」の紙を貼り出された写真がインターネットに流れた。これは、逆に日本の消費者などから「売国奴」とネットで叩かれる事態になった。

   ユニクロは、約40分後に貼り出された紙を撤去したとし、「本件は会社の指示によるものではなく、また他の店舗ではこのようなことが起きていない。大変遺憾で、二度と起こらないよう社内で徹底する」とのコメントを発表。火消しに追われた。

   こうしたことから、9月18日の東京株式市場ではファーストリテイリングの株価は大きく値を下げ、終値は前週末比1310円安の1万7480円で引けた。下落率は6.97%にもなった。

事業の先行き懸念で「売り」先行

   9月18日の東京株式市場ではほかにも流通・小売り大手の株価が大きく下げた。イオンの終値は25円安(2.79%減)の872円。一時は871円まで下がり年初来安値を更新した。イオンのスーパー「青島ジャスコ」の被害総額が2億元(約25億円)に達し、復旧に3か月かかるとの情報が響き、売られた。

   セブン&アイHDは32円安(1.38%減)の2291円。テレビから店舗が大きく破壊される映像が流れた百貨店の平和堂も49円安(4.18%減)の1123円と大きく値を下げた。

   流通・小売り大手はこの数年間、中国の消費者向けに商品をアレンジするなど、中国国内のニーズに対応した柔軟な運営で店舗数を急速に伸ばしてきた。しかし、「中国市場に魅力を感じていても、今回の衝突で中国へのリスクが小さくないと考える企業がないとはいえません。撤退はないでしょうが、インドネシアやベトナムに比重を高めるなど、海外戦略全体をいったん見直すことを迫られることになるでしょう」と、東レ経営研究所の永井知美・産業アナリストはみている。

   一方、中国メディアなどは中国への経済的な依存度が高い日本にとって、中国に代わる存在はなく、「巨大な消費市場」である中国との関係を薄めることで、日本が今後も経済成長と繁栄を続けていくことは難しいと伝えている。中国としては、すでに「日本は中国に依存している」という経済への影響を積極的に伝えることで、日本に対して圧力をかける狙いがあるようだ。

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