尖閣諸島の国有化に端を発した反日デモが過激化し、日系企業の店舗が破壊されるなどの被害が続出している。中国政府は、日中関係の悪化にともなう経済的悪影響について「責任は全て日本側にある」と、強硬姿勢を崩していない。
そんな中、日本国内では、一部で「反日デモのきっかけをつくった石原慎太郎都知事に賠償請求すべきだ」との声が出ている。
「石原さんが、都による尖閣諸島の購入を働きかけなければ」…
ネット上で話題になっているのが、法政大学大原社会問題研究所教授・所長の五十嵐仁氏のブログ。2012年9月17日に更新された内容では、反日デモでの破壊行為を
「『愛国無罪』という言葉があるようですが、日本の商店や企業を襲って略奪することは、中国に対する国際的な信用を失墜させ、外交関係を混乱させるだけです」
と非難した上で、
「今回の事態の引き金を引いたのは石原都知事にほかならず、事態をここまで悪化させた全ての責任はこの人物にあります。石原さんが、都による尖閣諸島の購入を働きかけなければ、事態がこのような展開を示すことはなかったでしょう」
と分析。
「日系企業は10億円以上の損害を出したと言われていますが、それは全て石原都知事に 請求するべきでしょう」
などと主張した。このブログの内容は、ライブドアのポータルサイト「ブロゴス」にも配信されており、200件以上のコメントが寄せられている。内容は、
「敵を間違えている」
「中国にすり寄る貴方の姿勢こそ問題」
といった、否定的なものの方が多いようだ。
石原氏は「経済利益を失ったっていい」
しかしながら、五十嵐氏と同じ意見は他にもある。
ジャーナリストの斎藤貴男氏も、9月18日発行の「日刊ゲンダイ」のコラムの中で、
「反日デモで被害を受けた日系企業は、石原に応分の損害賠償を請求すべきだろう。あなた方が人生をかけてきた営みを、努力を、ここまでくだらない手合いに弄ばれて、それでよいのか?」
と書いている。
中国外務省の洪磊・副報道局長は9月17日の記者会見で、日中の経済関係への悪影響について聞かれ、
「不法な国有化による日中関係への深刻で破壊的な影響はじょじょに、はっきりと現れてきており、その責任は完全に日本側にある」
と主張した。「補償問題」については具体的には語らなかった。
一方、石原都知事は、今回のデモ被害が拡大する前の発言だが、9月14日の会見で、
「経済利益を失ったっていい。ほかで権益を広げたら?」
と発言している。
なお、藤村官房長官は9月18日の記者会見で、反日デモで損害を受けた日系企業などへの補償については、「中国国内で起きており、中国の国内法に従って行われるべきだ」と述べ、中国側による善処を求めている。
多くの日本企業の施設が破壊されたり、商品が略奪された今回の反日デモ被害。このままもし「泣き寝入り」を強いられるようなことになれば、日本側の国民感情も収まらず、日中間の新たな火種にもなりそうだ。