尖閣諸島の国有化に端を発した中国での反日デモにより、日系企業が相次いで襲われる中、海外高級ブランドが数多く出店する日系百貨店でも被害が拡大している。
中国のニュースサイト「網易新聞」や中国のツイッター「ウェイボー」には、スイスの高級時計メーカー「ロレックス」や高級ファッションブランド「クリスチャン・ディオール」の店舗が荒らされた画像がアップされた。これらは日本のインターネット上でも話題になり、「デモより略奪目的なのでは?」との批判が上がっている。
「平和堂」被害額は10億円以上
北京や上海など全国80都市以上で行われた2012年9月16日の反日デモは、一部で中国当局が催涙弾を撃ち騒乱状態になるほど、激しいものとなった。暴徒化したデモ隊により、トヨタ自動車やホンダの販売店、パナソニックの電子部品工場などの日系企業も放火や破壊の被害にあい、休業に追い込まれている。
デモ隊は日系商業施設を取り囲み、日系の百貨店「平和堂」にも突撃。湖南省・長沙の店舗では、看板などの外部や店内売り場を壊されただけでなく、衣服や高級時計などの商品の多くが略奪されたという。同じく被害にあった長沙市内の2号店とあわせると、被害額は10億円以上にも及ぶとのことだ。
「もう日本企業関係ない」「ただの強盗じゃ」
インターネット上で公開された「ロレックス」および「クリスチャン・ディオール」店舗の画像はいずれも平和堂店内のもので、ショーウインドウは粉々になり、そこにあるはずの高級品は見当たらない。デモ隊は「打倒日本人」を声高に叫びながら店を襲ったというが、商品を根こそぎ持っていってしまう悪質な行為には、2ちゃんねるなど日本のネット上でも非難が噴出。「もう日本企業関係ない」「金目のものがほしいから襲ったとしか」「ただの強盗じゃ」と、“なんでもあり”の状態にあきれたとの声が上がっている。
ただし、この件については中国でも疑問を抱く人が少なくないようで、ウェイボーでは「平和堂を守れ」という書き込みが見られたほか、「国の恥」とする声も多くあがっている。また、インターネット上では、平和堂での盗品を自慢げにネット上で公開した人に対して個人情報特定の動きが出ているという情報もあった。
とはいえ、反日デモの規模は日に日に膨れ上がり、収束の目途どころか激化の一途をたどっている。日系企業だけでなく、現地の邦人社会にも深刻な影響をもたらしており、日系企業の一部は家族の一時帰国なども検討し始めた。明日9月18日は、満州事変の発端となった1931年の柳条湖事件の日。大規模なデモが呼びかけられており、今後も各所で騒動が広がると予想されている。