中国漁船「ただの漁船と思わないほうがいい」
南シナ海の海域には、石油や天然ガスなどの海底資源の存在が有望視されるほか、豊富な漁業資源に恵まれていて、現在、南沙諸島は中国や台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが、西沙諸島は中国、台湾、ベトナムがそれぞれ領有権を主張している。 たとえば、南沙諸島をめぐっては1988年に中国とベトナムの海軍が武力衝突し、勝利をおさめた中国が一部を支配することになった。以降、大きな武力衝突は起きていないものの、中国が構造物を設置するなどの動きをみせたり軍事演習を行ったりすることで、そのたびに摩擦が表面化している。
中国漁船がベトナムなどに拿捕される事件も発生。中国は漁業管理や海洋監視などを理由に、海域における法執行活動の強化を図る動きをみせている。
「中国・電脳大国の嘘」(文藝春秋)などの著書がある、中国事情に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏は「中国が漁船を使って海洋上の権益を拡大するやり方はいわば常套手段ですから、尖閣諸島にやってくる中国漁船もただの漁船と思わないほうがいいでしょう」と指摘する。
とはいえ、どんなに中国漁船が領海内に侵入してきても、民間の船舶である限り日本側は粛々と警告を発して追い出していくしかない。
安田氏は「一つ間違うと2010年9月に起きた(海上保安庁の巡視船と中国漁船の)衝突事件のようなことが繰り返されることになる」と、危惧している。