日本政府による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化に抗議する中国の反日デモは、一部が暴徒化し、トヨタ自動車やホンダの販売店やパナソニックの電子部品工場、総合スーパーのイオンなどの日系企業が相次ぎ襲われ、破壊や略奪行為を繰り広げた。
反日デモは2012年9月15日、北京市の日本大使館前をはじめ中国の57都市以上に広がり1972年の日中国交正常化以来、最大級の規模となった。16日も午前9時20分(日本時間)から北京の日本大使館前ではデモが始まったほか、各地で抗議行動が行われる。
トヨタ販売店で100台が燃やされる
北京の日本大使館前では9月15日、2万人以上がデモに参加し、一部が館内に入ろうとして武装警察隊と衝突した。大使館前のデモは国有化以降5日連続で、参加者は「釣魚島を守れ」「日本に宣戦布告しろ」などと叫びながら、大使館に向けてペットボトルや生卵などを投げつけた。
一方、地方都市ではデモ隊が日系企業を襲い、破壊や略奪行為を繰り広げたが、「愛国無罪」のもと、黙認された。
山東省青島市では、参加した2万~3万人のデモの一部が暴徒化し、約10社の日系企業が襲撃された。トヨタでは販売店が放火され、100台以上のクルマが燃やされたり、パナソニックの工場では生産ラインなどが破壊されたりした。総合スーパーの「イオン」ではデモの参加者が「日本の店をたたけ!」、と叫びながら石を投げ、1階部分のすべての窓ガラスが割られた。陳列棚などが倒されて、商品が踏みつけられたり持ち去られたりし、営業休止に追い込まれた。
江蘇省蘇州市のパナソニックの工場では守衛室などが破壊された。湖南省長沙市では、パトカーを含め10台以上の日本車が破壊された。日本車に乗った中国人男性は車をひっくり返され、「非国民め!」と叫ぶデモの参加者に殴打された。四川省成都市では複数のコンビニエンスストアでレジが破壊された。
上海では邦人が襲われ負傷するケースが相次いだ。デモによる邦人の被害は今のところ報告されていないが、北京の日本大使館は引き続き邦人に外出などを控えるよう、注意を呼び掛けている。
16日も北京や成都、深センなど33都市でデモ
こうした大規模デモを中国政府は事実上「容認」した。日本政府による尖閣諸島の国有化に、中国が一丸となって反対していることをアピール。中国船の日本領海への侵入とともに、日本に圧力をかける狙いがある。
しかし、在外公館保護などを規定したウィーン条約を無視した投石を警察が容認するのは行き過ぎだ。中国では満州事変の発端となった1931(昭6)年の柳条湖事件から81年に当たる18日にもデモが呼び掛けられていて、それに向けてデモ隊の行動がさらにエスカレートして収拾がつかなくなる恐れがある。
日本政府は9月15日、中国のデモの拡大を受けて、中国政府に抗議するとともに、在留邦人と日系企業の安全確保を要請。北京の日本大使館の堀之内秀久公使が、中国外務省の羅照輝アジア局長に電話で申し入れた。
反日デモは16日も北京や四川省成都、広東省深センなど少なくとも33都市で呼び掛けられていて、朝から日本大使館前では再びデモが始まっている。