「年金過払い」また先送り 解散含みで与野党が及び腰

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   過去の物価下落時に減額しなかったため本来より2.5%高い年金(特例水準)がはらわれ続けている問題で、支給水準を引き下げる国民年金法改正案が、先の通常国会で成立せず、またも先送りされた。このため、2012年10月から始まるはずだった年金減額は来年4月以降にずれ込むことになった。

   年金の「過払い」は9月分までの累計で約7兆5000億円に達し、減額が半年遅れることでさらに5000億円膨張する。世代間の不公平の象徴とも言えるテーマだが、解散風が吹く中、高齢者の反発を恐れ、与野党とも及び腰の体たらくだ。

自民党時代から据え置く

   厚生・国民年金や公務員らの共済年金の金額は、前年の物価の増減などに連動して決まる。しかし2000~2002年度は物価が計1.7%下がったにもかかわらず、当時の自民・公明政権は高齢者の反発を懸念して年金額を据え置いた。これが膨らみ今は本来水準より2.5%高くなっている。そこで政府は国民年金法改正案を提出した。10月から0.9%減額、さらに2013、2014年に0.8%ずつ下げ、3年をかけて計2.5%減らす内容だ。

   通常国会は終盤、野田佳彦首相に対する問責決議案が参院で可決され、首相が辞任を拒否したため審議がストップ。ただ、同法案については、問責にかかわらず、与野党を通じて成立させようという機運は乏しかった。

   衆院解散が近いとみられる中、2014年4月からの消費増税が決まり、「消費税を引き上げる一方で年金水準を下げるのは、国民の理解は得られない」(公明党の石井啓一政調会長)など、選挙前の負担増回避という議員心理が働いたわけだ。民主党内でも、3年間で払い過ぎを解消する政府案に対し、「5年間で解消」の意見も根強かった。

   2012年度の基礎年金(満額)は月6万5541円だが、本来額は6万3900円。この払い過ぎは年間約1兆円に上り、放置すれば今後も年々膨らんでいく。その分、積立金が取り崩され、年金財政が悪化していく。そのつけは若者世代に回されることになり、若者に広がる年金不信が、さらに増幅されるのは必至だ。

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