スズキ軽乗用車「ワゴンR」全面改良 ダイハツやホンダに対抗、首位奪還狙う

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   スズキは主力の軽乗用車「ワゴンR」を4年ぶりに全面改良し、2012年9月6日に発売した。従来車種より燃費性能を22%も向上し、軽ワゴンでは最高となる「ガソリン1リットル当たり28.8キロメートル」を実現した。

   ホンダが室内の広さを売りに昨年末に発売した軽乗用車「N BOX(エヌボックス)」などが人気を呼ぶなか、軽の「エースで4番」とも言えるワゴンRは「エコ」を前面に打ち出し、攻勢をかける。2007年に軽のシェアでダイハツ工業に首位を明け渡したままのスズキとしても、首位奪還に向けた狼煙を上げた形だ。

「ムーヴ」をしのぐ低燃費

4年ぶりに全面改良されたスズキの「ワゴンR」
4年ぶりに全面改良されたスズキの「ワゴンR」
「気力、体力、知力を全部結集しないと、目の色を変えないとなかなか(軽首位は)奪還できない」

   発売日に東京都内で会見したスズキの鈴木修会長兼社長は、自らに言い聞かせるように気を引き締めた。

   1993年に初代を発売したワゴンRは、今回の刷新で5代目となる。全面改良のポイントは燃費性能向上だ。減速時に発生するエネルギーをエアコンなどの電源に変換し、エンジンの負荷を減らす新技術を搭載。従来車と比べ約1割も軽量化させたことと合わせ、軽ワゴンで競合するダイハツ工業の「ムーヴ」をしのぐ低燃費を実現したという。

   ダイハツに軽の首位を明け渡したのは、スズキが「薄利多売」から「採算重視」への転換を進めていた時期だ。必死に首位陥落を食い止めようとしていたわけではなかった。全国の販売店の体力をつけることにも注力し、ほとんどの販売店を黒字化させることにも成功している。

   とはいえ、いくら採算重視でも、国内で軽の割合が拡大するなかで、スズキの存在感が低下し続けることは受け入れがたい事態となりつつあった。ライバルも相当力を入れているだけに、「目の色を変える」必要があると認識しているのだろう。

ホンダを含め「軽3強」の時代

   実際、軽自動車の新車販売台数は2006年の202万台をピークに減少傾向にあるが、登録車と合わせた国内市場での割合は高まりつつある。今年1~8月で見れば37%に達し、10年前より5ポイント超も拡大した。また、全国軽自動車協会連合会によると、今年3月末時点の軽自動車の普及台数は100世帯あたり51台と過去最高を更新。単純計算で2世帯に1台は保有されていることになる。特に公共交通網の薄い地方では女性や高齢者の移動手段として欠かせなくなっている。登録車に比べて維持費が安いことも根強い人気を支える。

   首位を行くダイハツは年々、スズキとの差を広げ、昨年の軽乗用車シェアは37.5%で5.9ポイント差をつけた。ダイハツはハイブリッド車並みの1リットル当たり30キロメートルの燃費性能を誇る軽乗用車「ミライース」で市場を開拓していることも大きい。ホンダの「N BOX」も今年、4月から5カ月連続で軽の販売首位を獲得。以前はスズキ、ダイハツが「軽2強」だったが、最近ではホンダを合わせて「軽3強」とも呼ばれる時代に入っている。

   主力のインド市場では労働争議の影響でシェア低下が確実なスズキ。国内市場で反転攻勢を期す戦略には本気度が増しており、俳優の渡辺謙さんを起用したワゴンRのテレビCMも異例の積極展開という。

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