セブン&アイ・ホールディングス(HD)は傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の正社員を現在の8600人から半分に減らす。その一方でパートタイマーの比率を現在の77%から90%に引き上げ、これらの施策で2015年度の人件費を100億円削減する。
イオンなど他社のパート比率は現在80%前後で、パートを増やすことで人件費を圧縮しながら、「地域やお客に密着」(セブン&アイHD)して、スーパー事業を立て直す。正社員は半減し、パートのまま、「店長」になるという事態が出現する。
スーパーでも「接客」販売に転換する
イトーヨーカ堂は衣食住の売り場をそろえた総合スーパー、173か店を展開する。ただ、ライバルのイオンや、衣料品専門チェーン店などとの販売競争の激化で業績が低迷し、抜本的な改革が急務になっていた。
今回のリストラ策について、親会社のセブン&アイHDは「パート層を厚くすることを優先的に進めていく」と話し、単なる人員削減ではないことを強調する。
「大量の商品を並べて販売するセルフ型のスーパーのスタイルではもう商品は売れない。たとえば、衣料品でもPB(プライベート・ブランド)商品などを中心に、接客販売を取り入れたことで売れている商品はある。とはいえ、現在店頭には接客できるほどの人員はいないし、それを正社員で賄うことは(コスト面で)むずかしい」と、パートの必要性を説明する。
同社によると、パートを現在の約2万8000人から、2015年度(16年2月)までに約7000人増やして3万5000人にする。パートの採用拡大で、15年度の総従業員数は約4万人と、現在より約2500人増えるが、人件費は7%減の1330億円になる見通しという。
グループ内の他社への転籍や新卒採用の抑制実施
正社員の削減は、グループ内の他社への転籍や新卒採用の抑制によって実現する。希望退職は実施しない。同社では毎年春先に、イトーヨーカ堂の社内でセブン‐イレブンの店舗オーナーの希望者を募っていて、こうした制度も活用する。12年は約200人が応募し、これから研修などを経て転籍や再就職する。
セブン‐イレブンは2012年5月に秋田県に出店。9月9日には、四国に出店することを発表した。出店のない「空白地」は青森、鳥取、沖縄の3県だけになり、今後も出店攻勢をかけていく。小売り業務に精通したヨーカ堂の社員を、今後はセブン‐イレブンのオーナー店の経営指導員や、直営店やフランチャイズ加盟店の店長に据えることで人材を確保する。
またグループの百貨店、そごう・西武でもヨーカ堂社員を受け入れ、店頭での接客やPB商品の開発などにも活用する。
「社員を減らしてでも、パートのモチベーションを高めていく」
その一方で、優秀なパート人材を確保するため、給与制度を改めるほか、生鮮品の加工などで高い技能を持つ人を厚遇。さらに、店長などの管理職に登用する仕組みも設ける。
セブン&アイHDは、「希望すれば正社員として採用する用意はあるが、基本的にはパートのまま店長に就いてもらうことを考えている。社員を減らしてでも、パートのモチベーションを高めていく」と話し、それによりスーパー事業の収益性を上げる。
イトーヨーカ堂の2011年度の営業利益は、東日本大震災後の特需を追い風に105億円と前年度の5倍近くに増加した。ところが、12年度3~5月期の営業利益は前年同期比57%減の23億円と、再び苦戦を強いられている。