独立行政法人、都市再生機構(UR)のあり方を議論してきた政府の調査会は2012年8月末、都市部の高額物件などを手がける賃貸住宅事業を2014年度にもURから分離して政府全額出資の株式会社にすることを柱とした改革案をまとめた。
URは約13兆円の負債を抱えており、株式会社の収益を返済に充てたい計画だが、改革の行方にはさまざまな課題もある。
来年度中に法案提出の意向
改革案では、URの主力の賃貸住宅事業について、不動産投資信託(REIT)など民間企業の経営手法を導入することで収益改善を図る事業と、高齢者や低所得者向けの住宅など公共性が高く政策的な対応が必要な事業とを明確に分離することとしている。
株式会社は政府が100%出資で設立し、民間の手法を活用することで収益増を図ることを目指す。都市部を中心とした約10万戸の物件が対象になる見込みだ。
一方、公共性の高い事業については、国が関与する新しい行政法人が引き継ぐ計画で、低所得者らが住む団地などの低額物件を扱う。また、市街地の再開発事業や土地区画整理事業については、東日本大震災の復興事業を手がけるなど公共性が高いとして、やはり行政法人が引き継ぐこととする。政府は来年度中に、こうした改革案を盛り込んだ都市再生機構法改正案を国会に提出したい意向だ。
「民業圧迫」につながる懸念
これまで先送りされてきたURの改革の方向性がようやくまとまり、民主党政権が懸案としていた独立行政法人改革にひとまずめどがつく形だ。だが、今後、改革案に沿ってスムーズな改革が進むか、疑問の声も少なくない。
そもそも「13兆円という大きな借金を抱えたこの組織を、どうやって国民負担を生じることなくソフランディングさせていくかが極めて重要だ」と岡田克也副総理が述べたように、UR改革は機構内に積み上がった莫大な負債をいかに返済するかが最大の課題。このため、株式会社は賃貸収入の増大や民間への物件売却を効率よく進めて、利益拡大を目指すことが使命となる。だが、都心などの優良物件が対象となるこの分野でも、民間との競合は激しい。「政府を後ろ盾にした会社が収益拡大を目指せば、民業圧迫につながる」との批判は既に各方面から上がっている。
一方、株式会社の住宅事業が成功して高い収益を上げられたとしても、行政法人の事業が悪化すれば、政府が税金などを投入して救済に動く可能性もあり、改革の先行きはまだ見通せないのが現状だ。