シニア「100兆円市場」を狙え 個人消費の主役に躍り出る

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百貨店の高級品消費を支える

   そこで、「資産効果」が議論になる。経済財政白書は、フロー(月々の収入)が現役より落ちるシニア層は、ストックである資産の動向に敏感だとして、リーマン・ショック(2008年秋)や東日本大震災後の消費手控えを例に、「高齢世帯の増加に伴って、消費マインドや資産価格の動向が、消費を通じて実体経済に影響が高まる」と、慎重に分析する。

   ただ、こうした「定説」が当てはまらないような動きも見える。最近の百貨店の高額消費だ。美術品、宝飾品、貴金属の売り上げは、1年近く増勢基調を続けている。旅行も、JTBの海外旅行は4~6月に全体で前年比3割伸びた中で、65歳以上が5割増と、全体をけん引したという。

   「震災後に手控えていた反動もある」(大手百貨店)と、楽観を戒める声はあるが、流通、サービス業界では、シルバー層の取り込みが今や最大の課題となっている。

   例えばイオンが朝早く活動を始めるシニア層に合わせ午前7時開店に早めたところ、好評のため秋以降も継続。そごう柏店がシニア向け化粧品売り場を設ければ、レンタルビデオなどの「TSUTAYA」は50歳以上をターゲットに本やCD選びの相談に応じる「コンシェルジュ」を常駐させた「代官山蔦屋書店」(東京都渋谷区)をオープン。居酒屋チェーンのワタミが若者向けの「和民」と差別化した小規模店「炭旬(すみしゅん)」を展開するなど、知恵を絞る。

   こうした小売業界の努力が、シニアの財布のひもをどこまで緩められるか。日本経済全体の行方にも、大きな影響を与えるだけに、目が離せない。

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