ホンダが「軽」自動車市場での巻き返しに、スポーツカーを投入する。同社の伊東孝紳社長が2012年9月2日に開いた鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)の誕生50周年を記念したイベントで、「軽」のスポーツカーを開発していることを明らかにした。
ホンダは軽自動車の販売を強化、なかでも「N BOX」は売れに売れている。新型スポーツカーを投入し、品揃えを増やすことで若者層などより幅広いユーザーの取り込みを図る。
「F1撤退」イメージダウンだった
ホンダは1991~96年に軽自動車の2人乗りスポーツカー「ビート」を発売しており、いまでも中古市場では根強い人気を誇っている。伊東社長はスポーツカーの開発について、「極端に小さく楽しめるスポーツカーを画策している」とし、「軽」として売り出す考えを示した。
ホンダは2008年のリーマン・ショックに伴う収益悪化で、フォーミュラーワン(F1)レースから撤退。伊東社長は、それがいまなおホンダのブランドイメージに影響しているとみており、「ホンダらしさ」を取り戻すためにも、スポーツカーの開発が不可欠と考えたようだ。
また、ライバルのトヨタ自動車が12年4月に「86」を、また富士重工業がトヨタと共同開発した「BRZ」(3月)を投入するなど、再びスポーツカーへの注目が集まりつつあることもある。
ホンダは「技術的な部分を含め、(ビートとは)何から何までがまったく別の、新型スポーツカーをつくることになります」と話している。
一方でリーマン・ショック後、ホンダは「軽」へ取り組みを加速させている。「軽」は日本の自動車販売台数の約4割を占めている。伊東社長は、軽自動車という枠組みの「限られた規格でどれだけ面白さを出せるかということ。(「軽」でスポーツカーという)市場としても可能性がある」と、意欲をみせた。
収益性重視、「N BOX」売れる
全国軽自動車協会連合会が2012年9月3日に発表した8月の軽自動車の新車販売台数によると、ダイハツが45004台とトップ。スズキは43742台、ホンダは23073台だった。
1~8月の累計でも、「ミラ」が売れたダイハツが48万9873台。スズキは41万2297台、ホンダは21万3730台で続いた。ダイハツもスズキも前年同期に比べて約1.4倍と伸ばしているが、ホンダはそれを上回る2.6倍増と、「2強」を猛追している。
ホンダが急伸している「原動力」は、11年11月に発売した「N BOX」だ。その名のとおり「ワンボックス」タイプだが、「軽」としては広い室内空間やスライド式のドアなど、「軽らしくない」ことが幅広い層の支持につながっている。
ホンダはリーマン・ショック後、収益性重視の車種を投入。「N BOX」は利益が薄いとされる「軽」にあって、最下位となるグレードでも124万円と高額車種の一つで、小型車のフィット(スタンダードタイプ)と価格を比べてもほとんど変わらない。
7月には派生車種の「N BOX+(プラス)」を発売。月間の目標販売台数3000台に対し、7月は約4000台を売った。「N BOX」シリーズ全体では2万1837台。1~7月の累計は12万5678台だった。