東京都港区六本木のクラブで、客の男性が目出し帽をかぶった男約10人に鉄パイプのようなもので殴られて死亡するという事件が起きた。
目撃者の証言によると、犯人が犯行に要した時間はわずか1分~数分で、無言でひたすら被害者を殴り続けたという。これまでにない異様な犯行で、暴走族OBなどで構成される「半グレ集団」によるものだとの見方も出ている。
店の奥にあるVIPルームが襲われた
事件は2012年9月2日午前3時40分ごろ、港区六本木5丁目の雑居ビル2階にあるクラブ「フラワー」で起きた。六本木交差点から南東に250メートル、徒歩にして3分程度の場所だ。店内では音楽イベントが開かれており、大音量の中で200~300人の客がいた。目出し帽をかぶったり、サングラスをして顔を隠した男10人が店に入り、店の奥のVIP席にいた飲食店経営の藤本亮介さん(31)に鉄パイプのようなもので襲いかかった。犯行時間はわずか1分~数分で、無言で藤本さんをメッタ打ちにした末に、無言のまま逃走したという。藤本さんは病院に搬送されたが、頭蓋内損傷で死亡が確認された。
通常、客は雑居ビルの外側にある階段経由で2階の「フラワー」に入るが、犯行グループはビルの1階の別の入り口から入り、VIP席に近い店の非常口から侵入したとみられている。このため、大勢の客に気付かれることなく、店の奥にあるVIPルームを襲うことができたとみられる。
実は11年12月にも、六本木では同様の事件が起きている。雑居ビル店内の飲食店に約20人が押し入り、店内にいた山口組系幹部(43)ら4人をビール瓶で殴るなどの暴行を加え、逃走している。この事件は、暴走族OBなどで構成される「半グレ集団」と呼ばれるグループの犯行だとみられている。この「半グレ集団」は、繁華街で荒っぽい事件をたびたび引き起こしており、最近では、元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏や市川海老蔵氏の暴力事件への関与が取りざたされている。
また、暴力団に籍を置いていないため、暴力団対策法や暴力団排除条例の適用対象外だ。出会い系サイトや振り込め詐欺にかかわっているとの疑いもある。
「暴力団なら刃物、拳銃。目立つやり方はしない」
今回の事件の犯人像についても、「暴力団」(新潮新書)などの著書があるノンフィクション作家でジャーナリストの溝口敦さんは、
「金属バットや鉄棒といった武器からすると、考えやすいのが『半グレ集団』」
と、やはり「半グレ集団」との見方だ。いきなりVIPルームを襲うという用意周到にみえる犯行についても、
「彼らにとっては(六本木は)庭先なので、リサーチしなくても、それぐらいはできる」
と、それほどの驚きはない様子だ。暴力団や過激派、外国人の関与については、
「被害者の年齢(31歳)からすると、新左翼過激派だとは考えにくいし、暴力団ならせいぜい刃物、拳銃を使う。暴力団は、目立つやり方はしない。中国人の可能性もなきにしもあらずだが、もっと違うやり方なのでは」
と否定的だ。
犯行グループと被害者との関係は現時点では明らかではないが、
「カネや仕事(シノギ)の関係で何かトラブルがあったのではないか」
とみている。