「米国におけるシェールガス革命で北米産天然ガス価格の激安が目につくが、海外に持ち出すには輸送コストがかかる一方、国際的な競争もあるので、中長期的には中東産ガスなどとの平準化が進み、北米産シェールガス価格は百万BTU(英国熱量単位)あたり10ドル程度になるだろう」
寺島実郎日本総合研究所理事長(三井物産戦略研究所会長)は2012年8月28日、カタールのドーハで開かれた中東協力センター(会長奥田碩国際協力銀行総裁)で、現在大幅なかい離のある米国産シェールガスと中東産ガスの価格差の将来展望についてこう語った。
北米産の天然ガス価格は低迷
北米産の天然ガス価格は2008年に百万BTUあたり12ドル水準で推移していたが、シェールガスの開発生産の進展とともに低下し、2012年6月のヘンリーハブ価格は2ドル50セント前後に低迷している。
逆にカタールなど中東産の天然ガス価格は需要の増加と原油連動の価格体系に引きずられて上昇、2012年6月の日本のLNG輸入価格は百万BTUあたり17ドル30セントに達し、日本の高値買いを指摘する声が出ていることを念頭に置いた発言だ。
日本の電力会社やガス会社は、2011年3月11日の東日本大震災で福島原子力発電所が停止したのを機に、大半の原発が操業停止したことに対応、電力不足を火力発電などによるエネルギー供給でしのいでいる。
電力・ガス各社はLNG供給の確保に血眼
このため、伝統的なLNG供給国であるカタールなどからのLNG輸入も拡大している。しかし中東産のガス価格は原油価格と連動する価格体系を採用しており、2012年8月末のWTI原油価格は1バーレルあたり95ドル前後をつけるなど再び高原状態を続けているため、ガス価格もここ数年上昇が続いている。
日本の原発は今後も早期の再開が見込めず、電力・ガス各社はLNG供給の確保に血眼になっているが、伝統的に依存している中東産ガスが高原状態を続けているため、財政的負担は大きい。経済産業省は9月19日に初のLNGの生産国と消費国の対話を東京で開き、合理的なガス価格体系の形成を目指すことにしている。