阿武隈高地の実家(田村市常葉町)へ帰ると、義姉の手料理(=写真)が食卓に並ぶ。兄が招集をかけた弟(郡山市)を交えて、きょうだい3人で飲み、かつ食べる。年に一回ほどのささやかな飲み会ができることを、だれかに感謝しないといけない、そんな気持ちになる。
弟も、私も、年をとるにつれて野菜を中心にした家庭料理に引かれるようになった。それを心得ているので、焼き肉などは出ない。今年はキュウリとキャベツ、ニンジンなどの浅漬け、インゲンのごまよごしとおひたし、ゴボウのから揚げなどが並んだ。"地料理"だ。
親から受け継いだ家庭料理がある。義姉はさらに創意と工夫を重ねる。必ず一品は新しい料理が出る。ゴボウのから揚げがそうだった。
郡山市近辺に住む娘たちには、ダンナがいて子どもがいる。娘たちは母である義姉の料理を食べたくて、ときどき実家に帰る。メイたちも同じようにして帰省するとやって来る。
3・11直後までは、保存しておいた山菜・キノコが食卓にのぼった。フキの油いため、チチタケのけんちん汁、マメダンゴ(ツチグリの幼菌)ご飯……。いつもなら一品くらいは出てくるのだが、それがなかった。
たとえば、チチタケ。相変わらずベクレルが高い。「チタケうどん」の本場、栃木県では各地で出荷自粛の憂き目に遭っているらしい。福島県内でも事情は同じだ。
われら福島県人からみると、栃木県人の「チタケ狂い」は異様にみえるが、汁の実程度ではぼそぼそしてうまくないチチタケが、炒めると独特のダシをだす。で、栃木県内ではうどん・そばのつゆとして好まれ、夏にはチチタケ採りがヒートアップする。
福島県内で夏にキノコ採りの遭難死がニュースになるが、それはチチタケ採りとみて間違いない。栃木県内ではもう十分にチチタケが採れなくなったのだろう。7~8月、いわき市の山へ、中通り、あるいは会津の山へ、栃木ナンバーの車がやって来る。最初は、遠征してくる理由がわからなかった。
キノコはどうも、カリウムと間違って放射性セシウムを取り込んでしまうらしい。チチタケばかりか、野生キノコすべてについて出荷自粛のお触れが出た。キノコ好きにとってはおもしろくない日々が続く。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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