航空機の搭乗時に、携帯電話やスマートフォン、無線通信機能のあるゲーム機などの「電子機器の電源はオフにしなければならない」とする規程を、米連邦航空局が再検討する委員会を設置したと、2012年8月28日に発表した。
現在の規程は、「電子機器が発信する電波が、航空機内の計器に支障を来たす」ことを理由に、離着陸時にはボイスレコーダーや補聴器、ペースメーカー、電子カミソリ以外の電子機器の利用を禁止しているが、米国でもこの説明に疑問をもつ人は少なくないようだ。
航空機の安全性確保が最優先
航空機に搭乗すると聞こえてくる「携帯電話などの電子機器の電源をオフにしてください」というアナウンス。日本では、航空機内への電子機器の持ち込みや使用を制限する規程は、国土交通省航空局が米航空無線技術委員会(RTCA)の基準に基づいて定めている。
国交省は2003年に、携帯電話やトランシーバーなどの機内使用を全面的に禁止した。また、07年には無線LANを利用したニンテンドーDSやプレイステーション・ポータブル(PSP)などの携帯ゲーム機も原則、使用禁止にしている。
ゲームは通信機能を切れば、シートベルト着用の表示が消えた巡航時には使用できるが、客室乗務員が通信機能の使用を確認することがあるなど、チェックは厳しい。
それもそのはずで、1993年以降、携帯電話などの機内使用を禁止するまで、乗客が機内に持ち込んだ電子機器が発した電波が干渉したことが原因で、自動操縦装置が突然解除されて機体が傾いたり、空中衝突防止装置が誤作動を起したりといったトラブルが、国内航空会社から200件近く報告されていたという。
ただ、「ゲーム機が発信する電波が、機内の計器に支障を来たすはずがない」「携帯電話の周波数と航空機が使用している周波数は違うはずだ」などという乗客の声が、航空当局に数多く寄せられていることも確かだ。
国交省航空局は、「本当に電波が影響するのかといわれると、すべての電子機器をチェックしているわけではないので、正確なところはわかりません。たとえば、携帯電話でも機種によって影響が異なったり、航空機によっても違ったりするかもしれません。また、一人が使用して問題がなくても、100人が一斉に使用したら、計器に干渉するかもしれません。航空機ですから、何かあってからでは遅いので、網羅的に規制するしかないんです」と、安全性の確保を最優先してのことと説明する。
携帯電話「航空機のドアの外であれば、使用できる」
日本で「電子機器の持ち込みや使用に関する規程」が見直されたのは、直近では2011年4月だ。それまで電子機器の使用は航空機から降りるまでは認められていなかったが、以降は「航空機のドアの外であれば、使用できる」ようになった。
国交省航空局は「ほんのわずかなことではありますが、携帯電話の使用などではちょっと前進した(便利になった)と思いますよ」と話す。
米国の再検討委員会は、パブリックコメントを募集して議論を進め、早ければ13年3月には結論を出したいとしている。
結論しだいでは日本も見直しが求められそうだが、国交省航空局は、「現在、電子機器の持ち込みや使用に関する規程を改正しようという動きは表立ってはありません」という。