「袋入り即席めん」の売れ行きが好調だ。年々減少傾向にあったが、2011年は17億7124万食と4年ぶりに前年を上回った(日本即席食品工業協会調べ)。
東日本大震災後に非常食として需要が拡大したことが要因だが、さらに11年11月に東洋水産が発売した「マルちゃん正麺」が大人気で売上げを伸ばしており、袋めんの「復活」を後押ししている。
袋入り即席めん、伸び率でカップ麺を上回る
日本即席食品工業協会によると、カップ麺などを含む即席めん市場は、2011年の生産数量で55億2989万食、前年比4.2%増となった。なかでも袋めんは4.9%増と伸ばし、カップ麺3.9%増を上回った。生麺は2.8%増だった。
とはいえ、カップ麺と袋めんとは1989年に生産数量が逆転して以降、どんどんその差が開き、2011年では2倍超の開きがある。全国で販売されている銘柄も、カップ麺は988銘柄、袋めんが242銘柄と、カップ麺が圧倒する。
そうしたなか、久々の大ヒットとなった袋めんが、東洋水産の「マルちゃん正麺」だ。
東洋水産によると、「マルちゃん正麺」は発売以来、2012年6月末時点で1億食を販売。すでに当初の販売目標である年間100億円(小売価格ベース)を上回った。予想を大きく上回る受注に対応するため、製造ラインを増設し、年間目標も200億円に上方修正した。
商品ラインナップも、昨年11月に発売した「醤油」「味噌」「豚骨」に加え、8月6日には新たに「塩」が登場した。
袋めんは100億円を売れば、大ヒット商品とされる。1971年にカップ麺が発売されて以来、カップ麺に市場を奪われ、下降傾向が続いていた。
また、袋めんは麺とスープのみのため差別化がしにくく、さらに「サッポロ一番」(サンヨー食品)や「チキンラーメン」(日清食品)というロングセラーブランドが根強い人気を誇る市場で、新商品の投入や育成がむずかしい環境にあったこともある。
同社はそういった「市場の閉塞感を打破したかった」と、袋めん「復活」に意欲をみせる。
袋めんは野菜などの具材をたっぷり入れるなど、いろいろと工夫できるよさがあり、栄養面からも見直されてきている。
「生麺」本来の食感を追求した麺
こだわりは麺にある。「従来のインスタント袋めんとは違い、夕食などにも対応できる新しい本格的な麺の開発が必要と考えた」(東洋水産)という。
醤油と塩には中太麺、味噌には太麺、豚骨には細麺と、それぞれのスープの味に応じて麺の太さを変えた。
また打ち立ての生麺のような、なめらかでコシのある食感を追求。これまでの袋めんは、主に生麺を蒸し上げて、そこから油で揚げて短時間で乾燥させたフライ麺と、揚げずに乾燥させたノンフライ麺の2つの製法でつくられたが、「マルちゃん正麺」は蒸しの工程がなく、生麺をほぐして円形にかたどって乾燥させている。
生麺をそのまま乾燥させることで長期間の保存を可能にする一方で、「生麺」のような食感を残した。同社では「生麺うまいまま製法」として特許を出願中だ。
ネットの掲示板やツイッターなどでは、俳優の役所広司さんが「マルちゃん正麺」をすするテレビCMも話題になり、「ウソだと思ったら食べてください」というCMを見て、「試しに食べてみたら、ホントにおいしかった」、「麺がいい」などの声が寄せられている。